第8話 スタードの冒険者っておもしれー奴ばっかだな

 話が落ち着くと、クロたちはテーブルを離れた。


 「ラック、俺らは他の奴らと飲むから、お前も色んな冒険者と仲良くなった方がいいぞ。おごるって言って声をかければ、悪い気がする奴はいないからな」


 そう言われて俺は酒場を見回した。


 酒場ではいくつものパーティーが楽しそうに過ごしている。


 右奥にミッキー達がいた。どうやら俺たちと同じように、仕事終わりで飲んでるみたいだな。


 「あ、ラック。 どうだった今日?」


 ミッキーはくりっとした目を輝かせながら笑顔で話しかけてくれる。


 あーミッキーの笑顔マジ天使。やっぱ惚れちゃいそう。てか、惚れちゃってもいいかな?


 俺は緩みそうな顔を引き締めて、真面目に答える。

 

 「ああ、荷物持ちだったのは残念だったけど、クロが冒険についていろいろ教えてくれたからよかったわ。お金も結構らったし、レベルももうちょっとで上がりそうだしね」


 そういうと、ミッキーはニッコリ笑った。


 「ほんと? よかった。きっとラックの能力と、クロのパーティーがマッチすると思ったんだよね」


 ミッキーは嬉しそうにシュワーをあおる。それもまためっちゃかわいい。


 「まずは荷物持ちをしながらお金を稼いで、この世界について知るのがオススメだよ。そのあとに君のパーティーを作ればいいんだよ」


 なんかうまく言われている感じもするけど……。でもミッキーの言う通りだ。


 「なあミッキー。俺、他の冒険者とも仲良くなりたいんだよね。良かったら紹介してくれないか」


 ミッキーに近づきながらそう言うと、ミッキーの隣にいたハイが俺をギロリとにらむ。


 相変わらず全身黒の服を着ていて威圧感たっぷりだ。おー、こわ。


 すると、ハイの隣、ミッキーの向かいにいるかわいらしい子がまあまあ、とハイをなだめた。ミッキーより身長が高く、青黒の長い髪の毛を後ろで束ねている。癒やし系の見た目だ。ハイは仕方ないな、という感じで視線を外す。


 「ごめんなさいねー。ハイってちょっと変わってるから、気にしないでねー」


 ん? この子ミッキーの友達だと思ったけど、ハイとやたら仲がよさそうだな。


 「この人はユウ。ハイの彼女だよ。パーティーには所属してるけど、うちの派遣にも来てくれるとってもいい人だよ」


 はあ? ハイの彼女、だと?


 「初めましてー。ユウです。ラックさん、よろしくねー」


 あの無口で毒舌なハイにこんないい彼女がいるのかよ。


 ハイってミッキー以外の女は興味ない、って感じなのにな。


 「よろしくお願いします」


 「こちらこそ、よろしくお願いしますー」


 俺とユウが挨拶をしていると、ハイは露骨に不機嫌そうだ。


 「フン」


 「もう、ハイったらー」


 俺は愛想笑いでユウに答えたが、ハイは一切気を許すつもりはないらしい。


 こいつ敵意出し過ぎだろ。


 俺は目をそらし、ミッキーの方に向き直る。


 「なあミッキー。俺はこの町の冒険者ともっと知りたいし、仲良くなりたいんだ。ミッキーから見て信頼できる冒険者がいたら、ぜひ紹介してくれないか」


 もちろん、友達がほしいというのもあるけど、女神を倒すパーティーメンバーを探したいからだ。


 「友達がほしい、ってことなのかな。じゃあ……」


 ミッキーが周囲を見渡しながら真剣に考えている。ほんといい子だよなミッキー。


 すると、ミッキーが指を差した。


 「あっちに座ってるのはガイ達のパーティーだよ。全員戦士の『山男集団』って名前。みんないい人たちで接しやすいから、一緒に飲めばすぐに仲良くなれると思うよ。あとは、向こうにいるマーコちゃんのパーティもいいと思うよ。マーコちゃんはスタードの大商人マコモアゼル家の箱入り娘なの。だから、話す時はうまく褒めてね」


 ガイたち、と呼ばれた男達をみると、この酒場の真ん中で一番豪快に酒を飲んでいた。酒樽ごと飲んでいるひげ面の男がガイらしい。奥には、マーコちゃんと呼ばれた子のパーティーがいて、メンバーがマーコちゃんの英雄譚に耳を傾けている。どっちも面白そうだな。


 まずは近くのガイに声をかけてみることにした。


 ガイ達に近づくけど、俺陰キャだから緊張するなー、とか思ってしまう。


 「あ、あのー、ガイさん、でよかったですかね。俺、最近こっちに来たラックって言います。あの、すっごい飲んでますね」


 そういうと、ガイはガハハと豪快に笑った。


 「おう、アースから来た新入りか! 一緒に飲もうじゃねぇか。さあ飲め飲め!」


 思いっきり腕を引かれ席に着かされる。つかなんつー力だ。


 「おめぇが新入りか! スタードはいいところだぞ! ずっと住んでいいからな! 俺はマッスだ」


 マッスはそう言うと、自分の筋肉を見せつけてくる。すげえ筋肉だ。


 「おう、こっちに来いよ」「いや兄貴、こっちが先だ」


 あとの二人、レッグとアーム兄弟(後で聞いた)も、ものすごい力で両方から引っぱってくる。


 何て言うか、みんなめっちゃ強引だな。


 でもなんか心地いいぞ。裏表全くなさそうだしな。


 俺はシュワーを一気飲みして、気になっていることをガイ達に聞いた。


 「なあ、ガイ達ってみんな戦士なんだろ? 魔法使いはともかく、僧侶なしで冒険できるのかよ」


 俺がそう言うと、ガイ達は全員大笑いした。


 「がっはっは!」 「うははははは!」


 ガイがまた俺の腕を強引に引き寄せる。つーかマジ力強いな。


 「いいかラック。筋肉は全てを解決するんだ」


 おいおい、何を言うかと思えば脳筋宣言じゃねーか。


 「なーに、敵なんざやられるまえに筋肉パワーで片付けちまうのさ。先に叩けばダメージなんか食らわないだろ。それに俺らは体力には自信がある。多少のダメージなんざ、蚊が刺したみたいなもんだ」


 「がっはっはっは!」 「うわーっはっはー!」


 ガイ以外も大笑いしてる。


 マジで脳筋を地で行ってんだな。それで通用してんのならすげぇわ。


 この後も俺は、ガイたちと思いっきり飲みながら話をした。


 強引だけど、ほんといい奴らだな。仲良くやれそうだわ。


 ガイ達と飲みながら、俺はふと気になった。スタードに来てる転生者はいるのか、ってことだ。


 「なあ、俺以外も転生者っているんだろ? 紹介してくれよ」


 そう言うと、ガイは一転、つまらなそうな顔をする。


 あれ、これ言わない方が良かった?


 「転生者ァ? ま、いるにゃァいるが、ここに来る奴はあんま目立たねぇ奴ばっかだからなァ」


 すると、ガイは指を差した。


 「おい、あいつには近づくなよ。転生者だが、女をだまして食ってるサイテーな野郎だからな」


 言われた方を見ると、4人の美女冒険者に囲まれた優男イケメンが、静かに酒を飲んでいた。


 おいおい、俺より先に異世界ハーレムとかふざけんなよ。ぜひやり方教えてほしいわ。


 俺はガイたちに礼を言って席を離れ、女に囲まれた優男のところへダッシュした。


 「な、なあ。俺は転生者のラックっていうんだ。あんたも転生者なんだろ?」


 そう言うと男はふっ、と言ってこちらを向いた。


 「僕に話しかけるとは変わった人だね。確かに僕は地球からの転生者だよ。名前は美祢山真理夫みねやままりお。こっちではミネって呼ばれてるんだ。よろしく」


 お、思ったより腰が低くて話しやすそうな奴だな。


 そう言ってる間にも冒険者らしき女たちがミネの腕に絡みついてくる。


 「ねぇミネ~。そんな子と話してないで私の相手をしてよ~」


 「そうだよー。私たちミネのために一生懸命冒険して疲れてるんだからー。疲れ取ってよー」


 おいおい、めっちゃうらやましいじゃねぇかよ。


 「分かってるよ。あとで宿ベッドでね。だから先に帰ってくれないか、子猫ちゃん達」


 そう言うと、女冒険者たちは素直に帰って行った。どうやら宿でミネの帰りを待つみたいだな。


 てかめっちゃモテるなこの男。マジでうらやましいわ。異世界ハーレムの体現者じゃないか。


 「えっと、ミネ、いえパイセン。」


 俺は思わずミネをパイセンと呼んだ。


 だってどう考えても異世界ハーレム人生の先輩だろ。


 「パイセン、ときたか。なんだい?」


 「なんでそんなにモテるんですか? 俺にもモテテクを教えてくださいよ」


 俺の率直な願いを聞いたネロは、ふっと笑って答える。


 「いきなりだねぇ。そうだね、彼女らは僕の……かわいいフレンド達で、僕の代わりに冒険に行ってくれているんだ。僕は彼女たちの働きから一部もらって生活してるってわけさ」


 おいおい、それってただのヒモじゃん。


 さっきガイが言ってた「女をだまして食っているサイテーな奴」ってこういうことだったのか。


 でもさ、それ異世界で出来てんならすげえな。


 自分は普段ゆっくりして酒飲んで、気づけば金が入って、夜は女が待ってるわけだろ? 


 童貞の俺にはちょっとレベルが高すぎるけど、サイコーだよな。


 「あのー、パイセン。どうやったらヒモ……いや、女の子が寄ってきて、自分の代わりに冒険なんかしてくれるんですか? 俺にもできますか?」


 すると、ミネはまた笑った。その笑いには少し皮肉が込められている。


 「うーん、残念だけど、今の君には無理だろうね。僕が彼女たちと楽しい生活が出来ているのは、僕のレアスキルが関係しているんだ」


 え、パイセンもレアスキル持ち? 


 えっと、女の子に命令する奴とか? そんなレアスキルあんのかよ。


 「それってどんな……」


 そう言いかけたとき、ミネはしっ、と言って俺の唇に指をかぶせた。


 えっ? 突然なに? 


 この後BL的な展開が待ってんの? いや、別に嫌って訳じゃないけど……、て俺何考えてんだ。


 「君とは今会ったばかりだから、説明するのは難しいな。ただね」


 ミネは優しく諭す。


 「君はさっき僕のことをヒモって言ってたけど、そんな単純なものじゃないんだ。僕には僕の役割がちゃんとあるのさ。まあ、周りは誰も分かってくれないから、この世界に男の友達は一人もいないけどね」


 そう言っているパイセンから半端ない色気が伝わってくる。俺うっかり惚れてないよな。


 「じゃあ、俺がパイセンの友達になりますよ。言いづらいんですけど、俺童貞なんで、イイ情報とかあったら教えてください」


 童貞、と聞くと、ネロはさらに優しそうな顔をした。


 「そうなんだ。早く言ってくれよ。この世界にはいい店がたくさんあるからさ。今度連れてってあげるよ」


 「マジすか! パイセン。ありがとうございます」


 その後、パイセンとあーんな店やこーんな店のことについて話をした。


 いや~パイセンは俺の理想だわ。


 俺もそのうちパーティー組むだろうけど、パーティーが美女だらけになんないかな~。


 ま、そんなうまくいかないって、こっち来て分かってるけどさ。でも男の夢だよな。


 ふと、マーコちゃんと呼ばれた女の子の方を見ると、まだマーコちゃんの英雄譚は続いていた。


 ガイ達と飲み始めてから1時間くらいたったはずだけど、まだやってんのか。


 パーティーメンバーはそれでもマーコちゃんの話に耳を熱心に傾けていた。


 確かにマーコちゃんはかわいいけど、あれは何か信者みたいなもんだな。


 話長くなりそうだし、今度話しかけよう。


 パイセンも帰ったし、今日はもう宿に帰って寝るかな。


 それにしても、俺今日初めて酒飲んだのに、全く酔ってないんだけど。結構飲んだのにな。


 もしかして俺ってマジで酒強いのか? 俺の酒豪伝説はここからスタートなんだろうか。スタードだけに。なんつって。やっぱ俺酔ってんな。

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