第2話 初めての打ち合わせ後の帰宅
//SE ゆっくりと扉が開く音
(疲れた表情の瑠夏が家に入ってくる)
「ただいま……あっ、お兄ちゃん、まだ起きてたの?」
「どうしてこんなに遅いんだって? そりゃ、打ち合わせって大変なんだよ」
(彰人の制止を無視して風呂場へ)
「お説教は後にして。今日は本当に疲れたんだから」
//SE 蛇口を捻る音。シャワーからお湯が出てくる音
「あー、生き返る……えっ、お兄ちゃん、まだいるの?」
「だから、遅くなったのは打ち合わせが長引いたからって言ってるでしょ」
//SE お風呂に入る水音
「両親と離れて暮らしてるから、お兄ちゃんが親代わりなのは分かるけど……」
(少しの間)
「ねえ、お兄ちゃん、まだそこにいる?」
「門限が七時っていうのも分かってるよ」
(少しの間)
「でもね、瑠夏ももう高校生なんだ。少しは信用してほしいな」
(少しの間)
「ありがとう。信じてくれて。亮さんはいい人だよ。紳士だし、素人の私に的確なアドバイスをくれる」
//SE ゆっくりと階段を上がる音
「……ヤキモチ焼いてくれたり、とか……あるのかな」
//SE お風呂から上がる音
「パジャマ、持ってきてくれたんだ」
//SE パジャマを着る衣擦れの音
服を洗濯機に放り込む音
洗濯機を閉じる音
階段を上がる音
「お兄ちゃん、起きてる……かな」
//SE ドアをノックする音
「お兄ちゃん、起きてる? 入っていい?」
「じゃあ、入るね」
//SE 扉を開く音
「今日はごめんね。連絡くらいすればよかったよね」
「あ、本当だ……ラインくれてたんだ。電話も……ごめんなさい」
「気づかなかった理由? あのね、亮さんが打ち合わせ中は音で集中を乱されたくないからって電源切ってくれって……」
「うん、そうだね。今度からはバイブにするよ」
(大きく頭を下げて)
「今日は本当にごめんなさい」
「分かったって? 本当に? ……怒ってない?」
「怒ってるじゃん!」
「うん、私が悪いんだけどね。心配させて」
「大丈夫だってば。もう高校生だし」
「高校生だから心配なんだって? なんでよ!」
//SE 時計の秒針の刻む音
「もしかして……嫉妬してくれてる?」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
//SE 扉を開ける音
「じゃあ、おやすみなさい」
「えっ、もう寝るのかって……うーん、締め切りがあるから、もう少し頑張る」
「頑張れよって……ありがとう」
「ほどほどに頑張れって、どうすればいいのよ」
「うん、おやすみ、お兄ちゃん」
//SE 扉がゆっくりと閉まる音
廊下を歩く音
隣の扉が開く音
「……心配させちゃったかな」
//SE パソコンを立ち上げる音
タブレットの上をペンが動く音
「ファンだって言われた時、驚いたな」
「でも、さすがプロ。てっきり編集さんの言うように、小説渡されて挿絵入れるだけだと思ってた」
「実際は、絵の指示から髪型、構図まで……描いては直すの繰り返し」
「おかげでラフは打ち合わせで完成したけどね」
//SE タブレットの上をペンが動く音
マウスのクリック音
「でも逆にありがたい。これなら大きな変更はなさそう」
「……お兄ちゃんのライン、返すべきだったよね」
「そりゃ心配にもなるか」
//SE 椅子にもたれる音
「私なら、もっと文句言ってるかも」
(小さく、小声で)
「初めての、はっきりした嫉妬……だよね」
「ごめんね、お兄ちゃん……大好き。……あっ」
「ば、馬鹿なこと言ってないで……瑠夏、集中! 集中!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます