夏休みに星新一を推す。~最初に読むべき一冊は?~
青切 吉十
夏休みに星新一を推す。~最初に読むべき一冊は?~
短編小説家星新一。私が子供のころから繰り返し読んできた「推し」の作家。
その多作で知られる作家の文庫本の中で、最初に読むべき一冊は、新潮文庫に収められている「未来いそっぷ」である。
この短編集は、まず、だれもが知っているイソップ物語のパロディからはじまっており、本を読むのが苦手な人でもとっかかりやすいしかけになっている。
星新一の中期を代表する作品集であり、名作・良作が多いだけでなく、駄作が少ないのも、初心者におすすめな理由。アイデアはどれも、ほぼ次第点以上であり、なにより文章が非常に安定している。
「未来いそっぷ」を読んで、星新一を気に入った人には、次に、同じく新潮文庫の「マイ国家」を読むことをおすすめする。
前期の星新一を代表する作品集であり、綺羅、星のごとく、良作が並んでいる。
文章、アイデアともに、ほとんどの作品が平均以上であり、個人的には、有名な「ボッコちゃん」よりも、初心者にはおすすめしたい。アイデアに外れはないし、文章は安定している。
星新一の良いところであり、また、悪いところは、作品に余白が少ないところである。
星は、彼の想像した世界そのままを読者に理解させようとする。それが独特な文体となって現れている。そのために、星の作品はとても読みやすい。しかし、作品に余白がないために、一部の人からは物足りないと思われてしまっている。明晰すぎてぼやけたところがなさすぎる。読者が頭の中で、創造する余地が少ないのだ。それが「星新一は卒業するもの」と言われてしまっている由縁である。
しかし、私が推している「未来いそっぷ」や「マイ国家」に収められている良作を読めば、たしかに卒業はしてしまっても、たまには同窓会を開きたくなる作家だよねと思ってもらえるだろう。と推しを弁護してみる。
夏休みに星新一を推す。~最初に読むべき一冊は?~ 青切 吉十 @aogiri
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