第26話 流星雨
「愛さん!話長すぎ!そんなには持ちこたえられへんで!!」
愛と盆城が話し込んでいる間、その周囲の狂骨を射抜き続けていたのは猫野瀬だった。
しかし次から次へと二人へ向かっていく狂骨たちの相手を続けるには、さすがに猫野瀬一人では無理があったようで、叫ぶ表情に余裕はすでになかった。
「あ、ああ、すまない。さすがにこれは私たちの手には余るな」
「だから武流殿の助けをと——」
「分かった、分かったよ。でもな盆城。これだけは覚えておいてくれ、私たちの任務は市民の命を守ることだ。いかにその中に強者がいたとしても、簡単に助けを求めるべきじゃあない」
「それは……承知しております。……すいません」
「まあ、お前は最初から理解してくれていることは分かっているよ。誰だってこの状況ならそう考えるのが普通——」
「愛さーん!!」
「ああ!もううるさいな!人がせっかく今良いことを言おうと——」
「TPO考えてや!T・P・O!!」
「(T)とても、(P)ポジティブな……(O)お、おしり?」
「どんなケツやねん!ポジティブなおしりって!キャラに似合わんボケはええですから!そない照れるなら最初から言わんときや!」
「初鹿野師団長?」
「止めろ……お前までそんな目で見るんじゃない」
「武流はん!すまんけど何とかしてや!!」
「ああー!!お前!武流殿に頼むのは私の役目だぞ!!」
「愛さんがもたもたしとるからや!うちももう疲れたし、第一師団の
「そんなのは関係ない!武流殿ー!!すまないが助けてくれないか!!」
——いかにその中に強者がいたとしても、簡単に助けを求めるべきじゃあない。
盆城の頭の中には、たった今、愛の言っていた言葉がリフレインしていた。
「あれ?武流はん……どこ行った?」
「え?武流殿?」
武流に助けを求めた二人だったが、先ほどまでいたはずの場所に武流の姿は見当たらない。
「まさか……一人で逃げ出したんじゃ……」
盆城がそう呟くと、愛は鬼のような形相で盆城を睨みつける。
「そんなはずがあるか!!武流殿が!武流殿が私——たちを見棄てて逃げるはずがないだろう!!」
「え!?あ、す、すいません!?しかし、その、実際に姿が……」
「あ、おったわ」
猫野瀬の声に、顔が二つに見えるほどの残像を残してそちらへと振り向く愛。
そこには森の中から出てくる武流の姿があった。
「武流殿!!」
「え?何?」
「どちらへ行っておられたのですか!?急に姿が見えなくなったので心配しました!」
「あ、ごめんごめん。ちょっと森の中に用事があったから」
「森の中に用事ってなんやねん。白い貝殻のイヤリングでも拾いに行っとったんかい」
「武流殿は熊ではない!!」
「イヤリングじゃないけど、ちょっとな。どうする?そろそろ手伝った方が良さそうなんじゃないか?あの人たち、結構ヤバそうに見えるけど」
武流の視線の先ではふらふらになりながら戦っている第一師団の姿があった。
その武流の言葉に、ちゃんと危険は危険と感じ取れてるじゃないかと思った盆城だったが——
「あ、でも、あの爺ちゃんが危なそうじゃないから、まだ手を出さない方が良いのか」
どこか微妙なところで感性がズレていると感じた。
「武流殿!怒真利師団長はすでにやられたようだ!我々だけではこの場を凌ぐことは出来そうもない!すまないが、また力を貸しては貰えないだろうか!」
「え?あの爺ちゃんやられちゃったの?おかしいな……そんな簡単にやられるようには見えなかったのにな」
武流が怒真利と握手した時に感じた力は、がしゃどくろ相手でも何とかなると思えるものであり、だからこそ愛に手を出さないで欲しいと言われた時も承諾し、慌てて後を追いかけるようなことをしなかったのだ。
「じゃあ、とりあえずこいつらから片づけるか」
武流はそう呟くと、その場から軽く助走をつけるように走り出し、空中に向かって大きく跳び上がった。
「武流はん!?何するつもりや!?うちらここにおって大丈夫なんか!?」
猫野瀬の心配ももっともで、この場には多くの狂骨の他にも、自分を含めた退魔隊の者たちもいる。
武流が何をやるかによっては、巻き込まれる可能性もあるのだ。
「大丈夫!コントロールは良い方だから!!」
「何か投げる気やーーー!!」
ピッチャーのように振りかぶりながら数メートル跳び上がり、その最高到達点で地面に向かって何かを投げた。
武流の手から放たれた何かは、手を離れた瞬間に輝きだし、無数の光の散弾となって祭儀場中に被弾した。
それは高速で流星雨のように降り注ぎ、狂骨たちを貫通した後、次々と地面へとめり込んでいく。
一撃で数十の狂骨たちが消滅。
被弾した味方は無し。
しかし、まだ多くの狂骨がその場に残っている。
何が起こったか分からず、呆然とする愛たち。
何となくヤバい気配を察して動きを止めた狂骨たち。
どうする?何かヤバそうな奴が来たぞ?
無いはずの耳打ちをする狂骨たちの嫌な予感は的中した。
骨伝導かな?
次の瞬間、何かがめり込んだ大地から光が溢れ出し、それは祭儀場中を一瞬で光のステージへと変化させる。
「ギ……アァァァァァ!!!」
そして、その光に包まれた狂骨たちは、断末魔の叫びを上げながら消えていった。
後には元の何も無い祭儀場。
あ、一カ所だけ大きく陥没した怒真利の墓穴だけが残っていた。
「何だったんだ……今のは……」
盆城は今までに見た事のない広範囲攻撃に呆然としている。
「それに……狂骨が出て来なくなった……」
それまで途切れる事無く湧き続けていた狂骨の発生も止まっている。
彼には武流が何をやったのか全く理解出来ない。
「武流殿……。今投げたものは一体……」
ゆっくりと武流の下に近づいていく愛が問いかける。
「どんぐりだ」
「……え?」
「さっき森の中で拾ってきたどんぐりを投げた」
「……初鹿野師団長。彼は一体何を言って……」
「盆城はん。武流はんのやることをいちいち考えたらあかん。考えるな、感じろ!やで」
「……初鹿野師団長。猫野瀬副師団長は一体何を言って……」
「この小骨は後から後から湧いてくるからな。こうやって倒すのが一番早いんだ」
「狂骨のことを小骨って……。こんなん喉に刺さったらご飯飲み込んだくらいじゃ取れへんで……」
「え?あいつらってご飯でも倒せるのか?」
「お婆ちゃんの知恵袋いじらんでええねん。どっちがボケとるんか分からんなるやろがい」
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