偽神の超能力者

からあげ魔神

第1話 実力主義の世界

 この世界では、超能力というものが存在する。


 僕のいるこの国にも超能力は存在していて、超能力とは誰しもが持つ当たり前のものであり、超能力の強さはその人物の価値を明確に現す力とされている。


 はずなのだが、僕は未だに自分の超能力がどのようなものなのかも、発動したことすらない。


 そんな僕は、当然落ちこぼれと言われ虐めの対象にされている。


「なんでお前みたいな超能力すら使えない奴がこのオレと同じ学校にいるんだよ」


 校舎裏にて、僕の目の前にいる男が、嘲笑うように、呟くように言う。


 なにも言えない。


 この世界では超能力を含め実力主義の思想が定着しているため、弱者を虐めようが殺そうが罪を負うことなどない。


 実力がない者の方が悪い。


 というのが国の方針だ。


 なので、なにも言えない


 なぜなら、僕が無能であるから、落ちこぼれであるから。


 そして、僕は殴られる。


 重々しい打撃が僕の腹に食い込む。


「ぐぁ……」


 そんな声を出しながら僕は膝をつく。


 目の前の男は言う。


「どうしてお前はここにいる?」


「なんの努力もしていないお前が!」


 男の声色が怒気を含んだ声に変わり叫ぶ。


 僕はつい頭にきて、言い返す。


「僕だって必死に努力してる!」


「それでも……」


 それを言いかけた瞬間また殴られる。


 気がついた時には、空も暗くなり満月が出ていた。


 おそらく殴られた衝撃で意識を失っていたのだろう。


 それを理解した瞬間、体が脱力感に襲われ、地面に寝そべってしまう。


「今度はこんなところで授業サボってたのか?」


 という声が聞こえたので、声の聞こえた方に視線をやる。


「そんなことしているから、超能力の発動すらできないんだよ!」


 呆れているようにも、茶化しているようにも聞こえる。その声を発しているのは、この学校でも3本指に入るほどの実力の持ち主であり、僕の唯一の友人、夢宮志音(ゆめみや しおん)である。すると突然


「まぁいいや、ご飯食べにいこうよ。もちろんお前の奢りで!」


 彼女はいつも通り、僕にご飯を奢らせようとしてくるものの、ちゃんと自分の料金は自分で払うし、なんなら僕が金欠の時は逆に奢ってくれるくらい優しいやつなのである。


 なので僕は、彼女に虐めのことは、話すつもりはない。


 なぜなら彼女に迷惑をかけてしまうから。


 そんなことを考えながら僕たちは帰路についている。すると突如として上空から男が飛来する。


 男が着地した地点はクレーターのようにひび割れていて、僕には、まるで人が着地したとは思えない跡が残っていた。


 その男はこちらを見るとニヤリと不気味な笑みをこぼしながらこう言った。


「なるほど、お前が……」


 男はゲラゲラと大笑いをした後に、僕のことを見て。


「お前が、超能力が使えないガキだな?」


 その男が、そう言い終えた。


 この世界は、実力がない者には人権が無いと言っても過言ではない。


 それゆえこのようなやからは時々現れる。


 その瞬間、その男は見たこともない速さでこちらに接近してくる。


 その手にはナイフが握られていて、僕が死の予感を感じた頃にはもう遅くて。


 僕が目を瞑ったその時、近くで衝撃音と共に、ぬるくてベタついたものが服や顔に少しかかる何が起こったのかを確認するため、目を開ける。


 そこに写し出されたのは、ナイフの刃が貫通した。


 志音の姿だった。























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