今日は本当に仕方ないやつ
翌日、燈良が目を覚ますと、既に部屋に光莉の姿はなかった。
携帯電話には『バイトいってくるから戸締りよろしく』とだけメッセージが残されていた。
燈良は身支度をすると、そのまま大学へと向かった。
しかしその道中、彼はカバンの中身を確認して気づく。
昨日、父親から渡されたパソコン用のディスクが入っていないことに。あるのは、確かに片づけた記憶のある小林のCDだけ。
記憶を辿ると、光莉の部屋でディスクを置いてそのままになっているはず。
どうせまた近いうちに光莉の部屋に行くのだから、回収はその時でいいだろうと考えるが、父親のネチネチうるさい確認を想像できてしまう。
特に燈良は、父親と違ってパソコン関係にあまり詳しくないため、言い逃れはできそうにない。詰められてストレスを溜めるだけだ。
「はぁ……」
燈良はその場で光莉へメッセージを送る。大学帰り、ディスクを取りに家に行くと。すると、光莉からは10秒以内に了解という趣旨のスタンプが届いた。
それから大学に着いて早々、彼は高校の時から一緒だった、仲の良い女子、
「燈良、おはよー。今日は一段と眠そうだね」
彼女は光莉のことも、燈良の元カノのこともほとんど知っている。気を遣わずに接することのできる、数少ない友人の一人。
「昨日飲んでたせいか、頭痛いんだよ。疲れもあんまり取れてない」
「飲めない癖に調子乗って飲むからだよ」
「そうだなー」
と、ここで燈良は大きな欠伸をする。するとアヤカは訊ねる。
「ねぇ、今日の夜、空いてない? ご飯行かない?」
「あ、今日は無理。姉ちゃんのとこ行くから」
「もう……。また?」
「今日は本当に仕方ないやつ」
「はいはい、そうですかー」
――それから時刻は夕方過ぎ。
燈良は光莉のマンションへ向かった。合鍵でエントランスのオートロックを解除し、エレベーターを上がっていく。
6階のいつもの部屋の前に着くと、玄関の扉に鍵を指す。
「……あれ?」
そこで、違和感を覚えた。
(鍵、開いてるじゃん。もう帰ってきているのか?)
女の一人暮らしだから、家に居ても絶対に鍵は閉めろといつも注意していた。
燈良は呆れながらも扉を開けると、思わずその場で固まってしまった。
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