盆・BONB・梵

犬丸工事

第1話 藤悟、あの夏の盆を振り返る

 盆、という行事について考える時、何を思いつくだろうか。


 世間ではご先祖様が帰ってくるという日。


 普通にこの日について連想することといえば、田舎への帰省やら墓参りだろう。

 父母のもとに帰って、のんびりのんびり。都会での土産話などに花を咲かせたり、地元の盆踊りなんかに参加してみたり。それが世間一般、普通のことだと思う。


 ……が、俺の場合は一味、いや、二味、三味くらい違う。


 田舎への帰省やら墓参りやら、そんな日常チックなものとは程遠く。


 俺的な盆といえば、竹に雀。そして、故郷の名産、笹かまぼこ。これに尽きる。


 なんでかって言えば、「この地にこのような美味い物が生まれたのは、ひとえに儂のおかげ! 崇め奉るがよい!」とかほざく野郎を、若干一名知っているからである。


 そして、そいつと出会ったのが、盆。まさにその時。


 そう、この時、俺の家では事件が起きた。信じられないようなことだが、これから話すのは実際、俺が体験したことだ。


 これから故郷へ向かう列車に乗ろうという所だが、着いた先に待ち受けることを思うと軽くブルーになってしまう。なので、時を忘れるためにも、話させてもらおうと思う。


 あれは、俺が十八の時、ちょうど大学に入って一番最初の夏。少し記憶を遡るだけで鮮やかに思い出せる、それくらいに強烈な印象を残す出来事。


 あの日も確か、今日みたいに暑くて、朝から蝉がうるさいくらいに鳴いていた……。

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