落語の舞台といえば当然江戸時代、中には現代を舞台にした新作落語なんてのもありますが、本作では与太郎が「あの、トーリョー、なんかいいクエストないかな」と言ってくるファンタジー世界を舞台にした落語なのである!
まず、なんといっても落語風の語り口がめっちゃ上手い! ファンタジー世界なのに、登場人物が棟梁と与太郎な時点でくすりとしてしまうが、この二人の掛け合いが実に巧みで、水を飲むように文章をスルスルと読み進められる。ダンジョン内でモンスターやトラップを発見するたびに与太郎が的外れな発言をして、それに対して棟梁が的確にツッコミを入れるというお決まりのパターンが心地よいリズムを生み出している。
落語の登場人物がダンジョンでおかしな冒険をするだけの愉快な話で終わらずに、最後のサゲの部分もバッチリ決まっていて、新作落語としての完成度も非常に高いのだ。落語好きな方には是非読んでもらいたいし、落語を全く知らないという人にも「落語ってのはこういう面白い噺なんだよ」と自信を持ってオススメできる一作だ。
(「ダンジョン珍百景」4選/文=柿崎憲)
カクヨム、なろう、その界隈のweb小説といえば、異世界転生ものにございます。
そして、山本先生といえばこの界隈で新作落語を発表なさっている強者にございます。
いよいよ異世界の落語を書くってんで、山本先生の本気が伺える作品にございました。
これでもそれなりの数の落語は見ているつもりでしたが、いやあ……
異世界の落語は見たことがなかった。
クエストに挑む与太郎も、冒険者の棟梁も、
花粉症のサイクロプスも、はじめてにございました。
ラストのサゲがまた、見事だったんですよ。
これは確かに、設定が異世界じゃないと成立しないし、
素直にびっくりいたしました。
落語好きも、異世界好きにもおすすめにございます。
ご一読を!!
火事と喧嘩は江戸の華。
どうやら異世界も同じようです。
明日は知れぬ身でクエストをこなす冒険者たちと、江戸っ子たちはソックリ。
刹那的なところとか、義理人情に厚いところとか。
だからでしょうね。
落語と異世界なんて交わらないかと思いきや、絶妙にハマっています。
特有の軽妙なリズムで語られるダンジョン探索の物語。
ちゃんとギルドがあって、生活があるのです。
ファンタジーとして成立しています。
かつ、落語ですからね。
「下げ」まで行けばアナタも唸ることでしょう。
噺家さんに演じてもらえたらいいですね。
オススメします。
とにかくオチの部分が素晴らしい。
ダンジョン、そしてファンタジーという分野の中で「こういう遊び」を効かせるというのはすごく斬新な発想だと思いました。
トーリョーとヨタローの二人でダンジョン攻略。そして迫りくるピンチの数々。
それでもどうにかのらりくらりと生き抜いてしまう二人。
なるほどダンジョンものだなあ、と二人のやり取りをしてほのぼのとした気分になる。そして落語調ならではの軽快な語り口も読み心地がいい。
それだけでも十分に読み応えがあるのですが、最後に明かされる「仕掛け」が「おお!」となります。
これはとても楽しい体験でした。
創作落語の名手、山本倫木さんが、困難なミッションに挑まれました。
最新作は、ダンジョン落語でございます。
が、展開されるのは、落語そのもの。おっちょこちょいのヨタと、ダンジョンマスターのトーリョーが繰り広げる珍道中!
ヨタはスライムすら退治できない初心者ですが、ある特殊な能力を持っていて、最強のトーリョーと意外な好相性。さて、ミッションクリヤーとなるでしょうか。
ダンジョンと落語って、相性いいんだな、って、サゲで思いましたが、いや、そんなことあるはずがない、きっと倫木さんの特殊能力「読者魅了」でポーっとなっていたんでしょう。
おすすめです。
ぜひどうぞ。