第十話 新しい住まい
「着いたよ」
車が停められたのは
「今日からここが君たちの家だ。気に入って貰えれば嬉しいけど」
「お城みたい。お花がいっぱいなのね」
その家の庭に咲く花々へとマルゥは駆け寄り、愛しげに撫でたり香りを嗅いだり。
「妹さんは気に入ってくれたみたいだね」
ガウスが目を細め、クロミアが頷く。
「改めて、お世話になります」
そう深々と頭を下げるのを押し留めて青年は笑う。
「気を使うことはないよ。僕たちには
「……
「その話は追々……。さぁ、案内するよ。荷物を忘れずに持っておいで」
このガウスという青年の言うことはよく分からない。しかし自分達
屋敷の長い廊下にはたくさんのドアが続いている。これらが全部部屋なのだろう。
「この部屋を使ってくれ。
「私たちだけの部屋を頂けるんですか?」
「当然だよ。プライバシーは必要だ」
にこやかに笑って、ガウスは部屋の鍵をクロミアに差し出した。
「あり……がとう、ございます」
言葉を詰まらせながら、クロミアは今度こそ深く深く頭を下げた。あの医師夫妻と母以外からこのように親切にしてもらったことなど生まれてこの方なかった。
「嫌じゃなければ、これから僕たちは家族のようなものだと思ってくれ。遠慮はいらないよ」
その後クロミアを連れて屋敷の中を案内して回った。この屋敷には沢山の部屋があり、それぞれに人が住んでいた。老若男女様々いたが、住人は主に若い男性で、クロミア達兄妹に興味を示す者はいなかった。
ここでは互いに干渉しすぎないのが暗黙の了解となっているらしい。嫌な雰囲気もなく、ただ挨拶を交わすだけ、といった付き合いだ。
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