ファミリー リインカーネーション
前野羊子
1【プロローグ】
「母さん!」
「豊子しっかり!」
私は幸せだったわ。こんな愛する家族に囲まれて。
「健一、・・・あなた」
白衣をびしっと着こなしているカッコいい夫の名を呼ぶ。胸には〈花沢健一〉の名札。
でもごめんなさいね私のせいで疲れているわね。
「なんだ?」
「ありが・・・また会い・・・」
「ああ、絶対に会おう」
「太一ちゃ・・」
「母さん、俺今日二十歳の集いだったんだぜ。ちゃんはよせよ」
「ふふふ、いつま・・私の可愛・・・息子・・」
「うん」
「それ・・似合って・・・。男前・・・。お父さんに・・・そっくり」
健一が大切に着ていた私がプレゼントしたイタリア風スーツを太一が着ている。
「そうでしょ。父さんのスーツだからな」
「かなりパンツの裾を伸ばしたがな」
「太一ちゃ・・も、また会いま・・・」
「うん。また俺を拾って」
「拾っ・・・じゃな、出会・・・ったのよ私た・・。ね?」
「ああ、俺たちの出会いは奇跡なんだよ」
もう呂律も回らない。
私のすっかり痩せたもう力の出ない左手の甲には去年最後の家族旅行で行ったハワイで記念に入れた健一と太一もお揃いのマリーゴールドのタトゥー。健一は下から同じタトゥの入った左手で私の手を握ってくれている。
その手の上に太一の左手も乗せてきた。
なんて暖かくて幸せなの。
眠くなってきたわ、遠くで心電図のブザーが鳴っているけれど、もう目が開けられない。
その後私の記憶はなかった。
思えば、自分の事ばかりでいい妻や母では無かったかもしれないわ。でも二人とも愛しているわ。いつまでも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます