第11話
インティスの街から西へ小一時間ほど歩くと、そこには既に闘いの痕跡があった。
「これは……ひどいね」
村だったものは既に瓦礫と化し、黒焦げになっている。民家の焼け跡からはくすぶる煙が見え隠れしていた。そしてそこかしこにゴブリンたちの死体が転がっていた。しかしそれらも踏み荒らされて無残な姿になっており、異臭が鼻をつく。
「こりゃ煮炊きの最中に襲われて逃げ出した様だな」
近くにいた冒険者が武器を構えながらぽつりとこぼす。
「まあ、ここまでなっちまえば魔法を使うのに臆することもないな」
別の冒険者がゴブリン目掛けて魔法を放つ。どうやら先んじてゴブリンと戦っていた冒険者たちは一時的に戦線を下げているようだ。村の片隅に天幕のようなものがあり、そこが拠点となっているようだ。私と和花ちゃんは村をつっきりながらゴブリンを蹴散らしていく。
「和花ちゃん、無茶しちゃだめだからね」
私は心配になって和花ちゃんに声をかける。
「分かってるよ。こいつらが統率されてるならゴブリンシャーマンとかいるかもしれないし、魔法に気をつけないとね」
相変わらずの笑顔だが、その目は笑っていないようにも見えた。
ゴブリンスタンピードの特徴としては多種多様なゴブリンが現れることだ。それまでどこにいたのか分からないようなゴブリンリーダーやゴブリンシャーマン、ゴブリンシーフにゴブリンジェネラルなど、通常のゴブリンとは比べ物にならないほどの脅威がはびこっている。
「和花ちゃん、気をつけてね」
「うん。芽依こそ気をつけて」
村の端まで来ると、何匹かのゴブリンたちが私たちの存在に気づいたようだ。敵意むき出しでこちらへ向かってくる。それと同時に魔法も飛んで来たので私は土の壁を作る魔法で防ぐ。するとゴブリンたちは一斉に飛びかかってきた! どうやら統率者はいないようで、連携も何もあったものではない。がむしゃらに襲い掛かってくるだけだ。しかし数が多いのと数発の魔法が厄介だった。
「和花ちゃん、魔法が厄介だから」
「了解!」
私は風の魔法でゴブリンたちをけん制し、和花ちゃんは剣で斬り倒していく。私もなんとか土の壁を維持できているけれど、数が数なのでいつまでも続くかどうか……。そんなことを考えていた矢先だった。
「芽依、あれ見て!」
和花ちゃんがゴブリンジェネラルを発見する。通常のゴブリンは体長1メートル前後、リーダーがもう30センチくらい大きくて、ジェネラルはさらに30センチ大きい、つまり私たちとそう変わらない大きさということだ。
「人間っぽいサイズだよね。斬り甲斐がありそう。小さなゴブリンに少し飽きてきた頃なのよね」
和花ちゃんは嬉しそうに笑う。ゴブリンジェネラルの武器は和花ちゃんと同じく長剣、私は土魔法の壁を解除して風魔法を使ってゴブリンジェネラルからの攻撃を防ぐ。さすがに長剣の攻撃を土壁で抑え込むのは難しい。ゴブリンジェネラルは身体が大きい分、受ける風圧も強いからそれでなんとか動きを阻害する。
「よし、雑魚はあらかた片付いたね。ちょっと残ってるけど、別に一騎討ちを望むほど真面目じゃないからさ、やるよ芽依!!」
「うん、和花ちゃん!!」
和花ちゃんは私が守るんだから!!
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