第15話 第1回全肯定ラジオ
『こんにちは! 月曜日のお昼休みは肯定マンデイ! しあわせ新聞部の、全肯定ラジオのお時間でございます! この時間では私達しあわせ新聞部に届いたお悩みに、私、若松空良と』
『武岩奈那が回答するわ。……勘違いしないで欲しいのは、私達は解決はしないってこと。ありのままに受け止める……それだけしかできないから、期待し過ぎないように』
『お悩みは皆さんお馴染みのSNS、アウスタでメッセージを送ってください。直枝明兎くんが確認して選ばれた物を読ませていただきます! 今ならなんと、私達のメイド服の画像が見れるとか!』
『……えっ!? まさかあれを載せたの! ……明兎、後でお話し合いが必要みたいね』
――こっわ。
『それでは早速行きましょう! まずはラジオネーム。整う兎ちゃんから! 〝しあわせ新聞部の皆さんこんにちは! 私は学校とバイトで目が回るほど毎日が忙しいです。たまに趣味を楽しむことがあっても、普段は代わり映えしなくて虚しくなります。……そんな私ですけど、褒めてください〟――とのこと』
――一発目はうさみみだ。忙しいわりにはそららと奈那の衣装をものすごい速度で仕上げてるけど……ちゃんと寝れてるのか?
『ん~! 素晴らしい。毎日がんばってるあなたを全肯定! 目を回すほど忙しいあなたが世界を回しているんです! あなたが止まれば地球も止まる! ありがとう、私は天動説でも地動説でもない、〝
『毎日お疲れ様。虚しさなんて、走り続ければ感じないものよ。……だから、目の前にあることを全力でこなしなさい。学ぶ時は学び、働くときは働く。食べるときは食べ、ムカつく奴は全力でざまぁしてやるの。……そして疲れ果てたら、そのときはしあわせ新聞部にいらっしゃい。――頭くらい、撫でてあげるから』
――最近の奈那さん優しすぎて怖い。俺も頭撫でて欲しい。できればメイド服で膝枕して。……おっと、うさみみからメッセージが。
『……整う兎ちゃんから追加でメッセージが入りました。なになに……〝奈那さん優しい。たくさん撫でて欲しいです。できれば写真のミニスカメイド膝枕で〟とのこと』
――さすが
『……すっ、するわけないじゃない! 次に変なこと言ったら住所特定して毎日部屋に泥団子投げつけてやるから! 小石入りで!』
『地味に凶悪だからダメですよ、奈那さん。それでは次のメッセージは……路傍の小石さんから! 〝僕は友達が居ません。……こんなダメ人間にも、優しくしてください〟 ふむふむなるほど』
『友達がいないことは、別に悪いことじゃないわ』
『その通りです! 友達が居なくても、あなたがダメなんてことはありません! あなたの価値はそのままで素晴らしい。……そのことに、周りの人が気付いていないだけ。今の世の中は、声の大きい人が目立つ世界ですから……生き辛いですよね』
『その通りよ。それでも生きていれば……いつか必ず、誰かがあなたをみつけてくれる。私は、そうだったもの』
『今居る場所が〝居場所〟じゃなくてもいいんです! 居たい場所をあなたの〝居場所〟にしてください! しあわせ新聞部はあなたの〝居場所〟探しをお手伝いします! 空良は、あなたに光を当てる存在になりたいです。まさに〝
――人動説とやらを便利に使い過ぎて、設定ガバガバなんよ。
『自暴自棄にならないことよ。私達にはなにもできないかもしれないけど、あなたの話くらいは聞いてあげるわ。人にはそれぞれ生き方があるの。……孤高も、かっこいいじゃない。ふふっ』
――おや、奈那さんの様子が?
『また整う兎ちゃんからメッセージが……。〝ミニスカメイドで孤高の奈那さんに会えるならいつでも会いに行きます〟……だそうです』
『水を差すんじゃないわよ!』
――奈那ってからかいたくなるよね、さすが
『それでは本日最後は……、あれ、明兎くん。これでいいの?』
――あ、待って。削除しようと思って手が滑った。それはちがっ……!
『……面白いじゃない。――明るい兎狩りさんから〝クラスの二大美女を独占している男が気に入りません。どうしたら良いでしょうか〟……だってさ。これ、あなたのことよね、明兎?』
――名前の殺意が強すぎる。
『え~っと、明るい兎狩りさん。それは違いますよ。明兎くんが独占しているのは空良だけです。私は明兎くんのものですが、奈那さんは違います。そこは大事な所なので勘違いしないように』
――それも勘違いじゃないかな??
『……確かに私が明兎のものだと思われるのは不愉快ね。勘違いしないで、明兎が私のものなのよ。彼が私を楽しませてくれているの。そこは大事よ』
――それは勘違いだろ、絶対。
『だめです奈那さん! 明兎くんは渡しません。彼を抱くと良く眠れ――』
「以上! しあわせ新聞部の全肯定ラジオのお時間でした! 紹介できなかったメッセージは、部が発行するあおとり新聞でお返事しますね! 次回のメッセージも後日募集しますので、アカウントフォローよろしくお願いします!」
――ピンポンパンポーン
……強引にマイクを奪って終わらせたが、教室に帰った時に集まる視線は嫉妬と殺意に満ち溢れていた。
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