猿鬼ホラー短編「怪異」
猿鬼
BASEMENT【⠀地下室。地下。また、建築物の下部階層】
これは私が体験した話です。
当時、私はその時付き合っていた彼と半同棲をしており、彼の家から職場に向かうことも多々ありました。
その日の朝もいつものように会社に行く支度をして、彼の部屋を出ました。
エントランスに向かうエレベーターに乗り1階のボタンを押して、スマホを見ていました。
しばらくしておかしなことに気がつきました。
彼の部屋は5階にあったのですが、
エレベーターで1階に行くのに普段は1分もかからないはずなのに、その時はすでに2分以上も経過していました。
あれ?ボタン押せてなかったかな?
と思いもう一度1階のボタンを押しました。
次はちゃんと動いてるのを確認してからスマホを見よう、そう思い階層のランプを見つめていました。
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おかしい
本来なら1階に着いて止まるはずのエレベーターがまだ動きつづけてるんです。
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どうなってるの??
目の前の異常に動揺していた時でした。
ポーン
地下一階
エレベーターの階層アナウンスが響きました。
確かに私は1階のボタンを押しました、ましてやここは地下の階層なんてありません。
止まったエレベーターのドアが開き見えた景色は何も無い暗い通路のような場所でした。
エレベーターの1歩向こうは真っ暗で奥から微かに
風が吹いてるのを感じ、少し熱を感じました。
生暖かい…
私は直感で降りたらまずいやつだ…と思い
降りずに閉まるボタンをなんども押しました。
ドアが閉まります
ドアが閉まります
ドアが閉まります
ドアが閉まります
アナウンスは流れるのになぜかドアが締まりません
なんで閉まらないのよ!!!
私は諦めず何度も繰り返しボタン押しました。
ドアが閉まります
ドアが閉まります
ドアが閉まります
その時でした、通路の奥から ぴちゃぴちゃと音を鳴らしながら獣の様に唸る何かが近ずいて来るのが見えました。
やばいやばいやばいやばいやばい
私は必死にボタンを押し続けました。
ドアが閉まります
ドアが閉まります
ドアが閉まります
ドアが閉まります
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ
それが近ずいて来るにつれ唸り声が人の声であるあることに気づきました。
「熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い」
ドアが閉まります。
ポーン
やっとドアが閉まり私は安堵からかその場に座り込んでしまいました。
あれはなんだったのだろうか?
閉まるドアの隙間から一瞬見えたそれの姿はまるで無数の人間が溶けて固まったような肉の塊、
この世のものではない事だけがわかりました。
それからのことはよく覚えいません。
気づいた頃には1階に着いていました。
それがあったからという訳でもないのですが
何となく彼とも疎遠になり別れたので、
あのマンションがまだ残っているのかもわかりません。
後から聞いた話なのですが、戦時中あのマンションがあった場所には大型の防空壕があり、
沢山の人が米軍の火炎放射器で焼かれ亡くなったそうです。
今でもあの日の事を思い出して
考えてしまいます。
もしあの時、あの階層で降りていたら、
私はいったいどうなっていたのでしょうか?
想像したくもありません。
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