第20話 子どもだまし

 桜と魁は契約結婚することになった。

 祖父と父が反対したところで、鬼頭家最有力者の母がオッケーを出せば話は順調に進んでいく。


「これいったい何があったんだよ⁉」


 鬼が暴れた応接間を見たがくは驚愕していたが、桜の契約結婚が決まって父と祖父が暴れた、という母の説明で納得していた。


「あの2人はヤバイから。ねーちゃんのことが好きすぎる」


 そういうがく自身も、かなり姉のことが好きである。

 挨拶に来た魁を見て、何かモニュモニュ言っていたが、声が小さすぎて誰も聞き取れなかった。


 ちなみに契約結婚の理由はズバリ【金】ということになっている。

 がくが小学生でも現金の力は知っているのだ。


 契約結婚した理由についても、それっぽいものが用意された。


「外国の方だから、日本で住むために国籍の関係でね……」


 という母の言葉でがくは簡単に納得した。


「そうなんだー。事情がなきゃ、わざわざねーちゃんと契約結婚なんてしないよねー。でもそれって詐欺とかにならないの?」


 疑問はそれだけだった。

 母は笑って答える。


「ふふ。詐欺にはならないわねぇ。だって日本で書類上の夫婦になるわけじゃないから。契約結婚は、魁さんがこちらに住むのに、魁さんの国のほうで必要なだけだからね。アチラは日本と結婚のシステムが違うから大丈夫よ。詐欺にはならないわ」

「アチラって、どこの国?」

「ふふ。それは秘密でーす」


 母は口元に右手の人差し指を当てて、楽しげに笑った。

 がくは首をひねって唸っていたが、やがて両手を合わせてポンと叩くと1つの結論に達した。


「て、ことは……。もしかして魁さんって王族⁉」


 それを誰も否定しなかったので、がくのなかでは魁は王族ということになっている。

 鬼の里での魁の立場は王族のようなものなので、大きく間違ってはいない。

 こうして子どもは微妙な形で騙されたのだった。

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