ハナマユドクムシ
■ 1. 学名・和名・分類
学名:Floripteris toxicornis @ Luthiris Prime
和名:ハナマユドクムシ
分類:ルシリス・プライム圏 動物界 節足動物門 昆虫綱 花翅目(Floripterida)
■ 2. 生息地
ルシリス・プライムの赤道直下に広がる「ミラフォリア密林」に生息。湿度は常時90%以上、地表は苔と発光菌類で覆われ、昼間でも薄暗い環境。成体は主に樹冠部から中層にかけて行動し、昼行性だが曇天や霧の多い日には活発さを増す。花びらの入手には密林内の有毒植物「カラリア草原花」が欠かせず、その群落周辺に頻繁に姿を現す。
■ 3. 成体の体長
体長は8〜11cm。細長い胴体に対して、背部には複数の「花弁固定突起」が並び、そこに採取した花びらを装着する。翅は透明で、花弁の彩りを邪魔しない構造。触角は幅広く、紫外域・可視域・近赤外域に加え、花の毒素由来の化学蛍光も感知できる4色色覚を持つ。
■ 4. 生態
【餌】
主食は花蜜と樹液だが、幼虫期は小型節足動物や花粉嚢を食する雑食性。毒花から蜜を吸う際、体内の解毒腺で有毒アルカロイドを分解し、その一部を皮膚分泌物として再利用する。これにより、外敵は本種を噛んだ瞬間に強烈な苦味と痺れを感じ、すぐに吐き出す。
【行動】
オス・メスともに花びらを収集し、背中を飾る。集める枚数と色の多様性が、縄張りの広さや餌場の質を間接的に示すシグナルとなる。4色色覚により、同種が見落とすような僅かな色差や光沢まで識別可能。天敵に遭遇すると、翅を小刻みに震わせ花びらを揺らし、捕食者の学習回避を促す。
【繁殖】
繁殖期は年2回。オスは樹上の開けた枝先で「花びら舞踊」と呼ばれる求愛行動を行う。より多く、かつ色鮮やかな花びらを付けた個体ほどメスに選ばれる確率が高い。交尾後、メスは有毒植物の葉裏に卵塊を産み付ける。孵化幼虫は落下して林床に到達し、数週間で樹上生活へと移行する。
【絶滅危惧度】
現在は密林の奥深くで安定した個体数を維持しているが、カラリア草原花の群落が環境変化で減少しつつあり、長期的には生息域縮小が懸念される。
【現地民との関わり】
ルシリス原住民「フィトゥラ族」は、この虫を「森の画家」と呼び、花びらを背負った姿を豊穣の象徴とする。婚礼衣装の模様は本種の花弁配色を模して作られ、花びらを直接採取することはタブー視されている。
■ 5. 発見時の状況
私が初めてハナマユドクムシを目撃したのは、密林でカラリア草原花の群落を観察していたときでした。視界の端で、花そのものがふわりと飛び立つのを見て、幻覚性花粉を吸いすぎたのかと本気で疑いました。近づいてみると、それは背中いっぱいに花びらを飾った節足動物。双眼鏡越しに観察していたら、まるでこちらを品定めするようにクルリと旋回し、光沢のある赤い花弁を一枚こちらに落として去っていきました。現地案内人曰く、それは「お前の背中は飾る価値がない」という意味だそうで、妙に納得してしまいました。
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