第4話 相席ショートケーキ④

「マジで美味しかったぁ〜! ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした」

「ここのお店はリピ確定だわ! 他のケーキも食べてみたいし、他にも美味しそうなスイーツたくさんあるし、店内の雰囲気もめっちゃいいし!」


 僕も八雲さんと同じ考えだった。

 ここのお店にはこれから何度も足を運ぶことになるだろう。

 

「ねぇ、ねぇ、三鷹君ってカフェ巡りは一人でしてる感じ?」

「そうですね。基本的に一人で行きますね」

「そうなんだ〜。じゃあさ、私から一個提案があるんだけど!」

「何ですか?」

「私とKM同盟組まない?」

「何ですかそれ?」

「カフェ、巡り、同盟、略してKM同盟! 三鷹君さえよければだけど、私と一緒にカフェ巡りしない?」


 そう言って、八雲さんが手を差し出して握手を求めてきた。

 正直、とても魅力的な提案だった。 

 八雲さんと一緒にケーキを食べたこの時間は楽しかった。

 もちろん一人でカフェ巡りをするのは楽しいけど、誰かとこうして同じ食べ物をシェアしながら食べたりするのもそれはそれで楽しいと思ってしまった。

 だからこそ、とても魅力的な提案だった。

 でも、やっぱりどうしてもあのことが気になってしまう。

 八雲さんは気にしないような感じだったが、僕が気にしてしまう。

 

「その顔は悩んでる顔だなぁ〜? また、さっきのくだらないことで悩んでるんでしょ?」

「・・・・・・はい」

 

 どうやら、八雲さんには僕の考えなどお見通しのようだった。


「そんなさ、起こってもないことに思考を囚われて、今を楽しむことができなくなったら、もったいないよ! もちろんその思考も大事だとは思うけど、それよりも今の三鷹君がどうしたいかの方が大事じゃない?」

「今の僕がどうしたいか・・・・・・」

「今の三鷹君はどうしたいの? ちなみに私は三鷹君と一緒にカフェ巡りしたいって思ってるよ!」

「それは・・・・・・ズルくないですか?」

「だって言わないと分かんないじゃん? 私は三鷹君と一緒にケーキを食べたこの時間、超楽しかったよ!」

「僕も・・・・・・楽しかったです」

「そっか! それが聞けて安心した! もちろん無理にとは言わないけど・・・・・・」

「く、組みます。八雲さんとKM同盟」

「えっ、ほんとに? いいの?」

「はい。迷惑かけてしまうかもしれないですけど、よろしくお願いします」


 僕は八雲さんの手を握った。


「じゃあ、KM同盟結成ってことで、これからよろしくね!」


 八雲さんが満面の笑みを浮かべて僕の手を強く握り返してきた。


「てことで、次に行くカフェを決めてから解散しよっか! 三鷹君は今、気になってるカフェあったりする?」

「たくさんありますね。八雲さんはどうですか?」

「もちろん私もたくさんあるよ~!」

「どうやって決めますか?」

「う~ん。無難にお互いの行きたいカフェを交互に行くとかどう?」

「いいですよ」

「じゃあ、そうしよ~。最初は三鷹君の行きたいところからでいいよ~」

「いいんですか?」

「うん!」

「じゃあ、こことかどうですか?」


 僕はフォトスタで保存していた行きたいと思っていたカフェの投稿を八雲さんに見せた。


「いいじゃん! オシャレそう~! そこにしよ!」


 八雲さんも気にいってくれたみたいでよかった。

 

「次に行くカフェも決まったし、お会計して帰ろっか」

「そうですね」


 なんだかんだ三時間もお店に居座ってしまった。

 一人の時はいつも一時間くらいで帰る。

 それを考えると、いつもより二時間も長くカフェにいたというのは、それだけ八雲さんと一緒にいる時間が楽しかったということなのだろう。

 僕たちは席から立ち上がってレジに向かった。


「すみません~。お会計お願いします~」

「は~い」

 

 ホールにいた女性店員さんがレジにやって来た。


「お会計はご一緒でいいですか~?」

「はい。一緒でお願いします~」

「え、八雲さん?」


 別々で支払いをするつもりで財布を出して待っていたのに八雲さんがスマホ決済で 僕の分も一緒に支払いをしてくれた。


「今日、相席してくれたお礼と、私と一緒にKM同盟を組んでくれたお礼♡」


 八雲さんが僕の耳元でそう言った。

 

「いやいや、さすがに申し訳ないですよ」

「いいって~。チーズケーキは元々奢る予定だったわけだし、そのついで!」

「なんかすみません。ありがとうございます。今度は僕に奢らせてください」

「じゃあ、それは楽しみにしとこ~っと! ごちそうさまでした~。ケーキとても美味しかったです! また来させてもらいますね!」

「ありがとうございます~。またいつでもお待ちしてます~」

「ごちそうさまでした」


 僕と八雲さんは女性店員さんに挨拶をしてお店を後にした。

 

「今日マジで楽しかった~! 改めて本当にありがとね! 三鷹君!」

「こちらこそありがとうございました。僕も楽しかったです」

「じゃあ、次は三鷹君の行きたいカフェだね!」

「そうですね」

「また日程とかはRIMEで決めよう~」

「分かりました」

「ちなみに三鷹君の家ってどっち方面?」

「僕はあっちですね」

「私と反対か~。じゃあ、ここでお別れだね。また、学校でね~」

「はい。また学校で」


 お互いの家が反対方向だったので、八雲さんとはここで別れることになった。

 少し名残惜しいという気持ちを抱えながら、僕は自宅へと向かって歩き始めた。

 

☆☆☆

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クラスメイトの甘党ギャルにカフェで出会ったら、KM同盟を組むことになった件~ラブDays~ 夜空 星龍 @kugaryuu

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