漫才4「スランプ」

幌井 洲野

漫才台本「スランプ」

<これは漫才台本です>

セリフの掛け合いをお楽しみください。


【スランプ】


二人 「どうも~。アヤミとアズサでアヤアズです~。よろしくお願いします~」

アズサ「アヤミ、あんたアヤミやんな」

アヤミ「ちゃう」

アズサ「え、今度はアヤミがちゃうて言うんか。何が起きた?」

アヤミ「ウチ、アヤミちゃうねん」

アズサ「アヤミちゃうかったら、あんた誰や?」

アヤミ「ウチ、スランプ作家アヤミなん」

アズサ「え、アヤミ、そうなん?」

アヤミ「うん、最近、何も書けへん。スランプや」

アズサ「そうかー、アヤミいままでパソコンでガンガン書いとったけど、スタンプに変えたら、そら書けへんな。なんや『校閲済』とか『請求書』とかか?」

アヤミ「あんな、どこの世界に校閲済と請求書のスタンプで小説書く作家がおるん」

アズサ「そやな、ホンマ、校閲済と請求書だけやったら、さすがのアヤミもよう書けへんよな。あ、でも『差戻し』とか『要修正』もあるで。ウチの会社でも、最近スタンプはよう使わへんけど、部長さんの机のスタンプボックスに入っとんの見たことあるで」

アヤミ「そうかぁ、ほなら、次の小説のタイトルは『請求書差戻し』いうのにしょうかな。て、ちゃうやろ!」

アズサ「なんや、アヤミ、スタンプ使うから、全然小説書けへんていうから」

アヤミ「スタンプちゃうくて、スランプや、ス・ラ・ン・プ!」

アズサ「そんな大きい声で言わんでも聞こえるわ。スランプて、あれやろ? 人前で使うたらあかんとかいう言葉」

アヤミ「それはスラングな」

アズサ「なんや、スラングちゃうんか。ほならなに?スランプて」

アヤミ「あんた、出版社に勤めとって、スランプ知らんのかいな」

アズサ「うん。それ生で行けるん? それともあぶった方がおいしい?」

アヤミ「出版社て振ったのに、なんで食べもんが来るんや」

アズサ「やって、ウチ、美味しいもん食べとるときが一番幸せなんやもん。次が、作家さんが締め切り守ってくれるとき。スランプとかで書けへんとか言って来られると、いちばん厄介や」

アヤミ「あんた、スランプて、言葉知っとるやないか」

アズサ「え、スランプて、そのスランプのこと? ウチ、作家さんが、それを生で行くかあぶるかどっちか悩んでしまって、文章書けんくなっとる思っとった」

アヤミ「ほなら、作家さんは、みんなスーパーとかでスランプ買うてきて、それで、どうやって食べようか悩んで、原稿の締め切り破った思うとんの」

アズサ「え、だってそうやんか。アヤミかてスランプで悩んどるんやろ? そんなに美味しいもんやったら、そら、どうやって食べたらええか悩んで、文章どころやないもんな」

アヤミ「うーん、ウチもなんや、スランプの味、想像したくなった。なんやろ、生かあぶる言うたら、海鮮系かな」

アズサ「きっとスルメみたいなもんやで。そのままかじってもええけど、ちょっとあぶるとホンマ香ばしい」

アヤミ「そやなぁ。スランプかじってスタンプでスラング使うたら、なんやちょっとええもん書けるような気がしてきたわ」

アズサ「あ、ところで、今月締め切りの原稿、もう書けた?」

アヤミ「それができひんからスランプで悩んどるていう話やんか!」

アズサ「な、そんな得体のしれんスランプとかで悩まんで、二人で回転焼き買うて、一緒に食べよ」

アヤミ「うん、そうするわ。て、ええかげんにせえ」

二人 「どうも失礼しました~」

(了)

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漫才4「スランプ」 幌井 洲野 @horoi_suno

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