振り子の国
白縫いさや
告白
春の夜に降る雨というものは風情があって良いものだ。深夜零時、私は床に入るまでのひと時を読書で過ごしている。手元にはすっかり冷めてしまったコーヒー。
――居た堪れなくなって顔を上げてみると、部屋の静けさにひどく驚く。こんなにも静かだったのかと。目で嗅いだ黒胡椒の香りを私の鼻は知らないし、目で触れた娘の手の柔らかさも私の肌は知らない。ましてや目で聞いた娘の告白など私の耳が知っているはずがない。まつ毛や唇があんなにも震えていたというのに。
時計はもう一時半を示そうとしていた。明りを消して毛布を被る。目を瞑ればまぶたの裏にまつ毛や唇の震えが見えて、私は嫌な気持ちになる。
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