幕間1 ガルダの苦悩
疲れた……メリッサとレイヤも顔色がよくない。2人とも疲労が溜まっているんだ__バーンが謎のモンスターに殺されてからずっと後処理に追われている。
普通にパーティーメンバーが死んだことを報告するだけなら軽く書類を書けばギルドが全てやってくれるのに……バーンが貴族だったせいでいろいろややこしくなってしまいやっと今、事情聴取が終わり解放されたのだ。
俺とレイヤは戦闘から逃走したことを責められ、危うく責任問題となるところだったし、謎のモンスターのことも散々追及された。バーンが実家から半分勘当されて半ば見捨てられていたおかげで俺たちは今、首の皮一枚繋がっている。
バーンはシャバナを自分の一存でクビにしたりと身勝手な奴だったが、あれでも貴族なんだと思い知らされた__シャバナはバーンが死んだことを知ったら何を思うのだろうか。
やっぱりスカッとするのかな。俺だったらざまぁ見やがれと思うかもしれない__しかし今はまだ伏せられているがいずれバーンが死んだことが発表されたらまた俺たちが何か言われるのだろうか__そう考えると先行きが不安だった。
そこでふと、今まで歩いていた大通りの方が何か騒がしいことに気づいた。振り向いてみると誰かが暴れて騎士と戦っているようだった。
「あれ……なんでしょう」
「さあ……騎士に喧嘩を売る自殺志願者じゃないかしら」
メリッサとレイヤも気が付いたらしい。2人ともその争いが起こっている一点を見つめていた。
「なんか押されてない?」
よく見ると黒い仮面を被った男が縦横無尽に動き回って罪人達をつないでいる鎖を切り落としながら騎士たちを翻弄しているようだった。騎士たちは明らかに手が回っていない。
「レイヤ、メリッサ、援護しに行こう。俺達だって罪人を捕らえておくことぐらいできるはずだ」
「ええ!」
「はい!」
瞬間、黒仮面の男が地面に手をつき何かを唱えた__地面は隆起し、巨大な人の形を成す。
「なっ!」
「あれって……」
俺達は思わず援護に向かおうとした足を止めてしまった__人型の黒色の巨人__間違いない。あれは俺達を打ちのめしてバーンを殺した謎のモンスターだ。それをあの男が召喚したのか?
「ああ……昨日のやつだ」
いつの間にか黒仮面の男は消え、黒の巨人がその巨体で騎士たちを殴り飛ばしていた__殴り飛ばされた騎士はそのまま倒れこみ、動く様子がない。
「っ……」
メリッサが恐怖でその場に座り込んだ__完全にトラウマになっているんだ。殴り飛ばされた騎士たちは……大丈夫。大丈夫。気絶しているだけのはずだ。
そのまま猛攻を続けていた黒の巨人はやがて動きを止め、その体はボロボロと崩れ落ちた。
そこにもう罪人達の姿はない。
「…………いったいどうなってやがるんだ」
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