第6話 贖罪と事情聴取…


  交番に連れられた俺は事情聴取が始まった。

  銀色で座り心地の悪い椅子に座らされた俺は

 ゴツゴツとしたボロボロの壁をぼんやりと眺めていた。

「新入社員と店員に痴漢を働いて、

 さらに別の部下にまで暴行を加えたのは本当ですか?」

 背が高く綺麗な瞳をしたイケメンが質問する。

 彼は俺と違って悪人を捌くために生まれたのだろうか…

 俺は彼の顔を見るのが苦痛になり顔を下に背ける。

【ぼ、暴行はし、してません。

 楯中に対しては本当に何もしてません。】

 俺は必死に言葉を紡ぐ。

「嘘を吐くな!」

 彼の声が僕の心臓の奥に突き刺さる。

「周りにいた人達と被害を受けた被害者が全員

 お前が一方的に殴ってたって証言してたぞ?」

 【い、いや…

 本当に俺は殴ってません!】

 俺はじんわりと痛む頬を押さえながら言った。

【俺は殴られた側なんですって!】

 俺は泣きそうな顔で必死に涙を堪えながら言った。

「あのねぇ

 あなた以外全員証言が一致してるんだって。

 もう正直に認めたらどうですか?」

 彼は俺の言うことを信じてくれず、

 そのまま俺は痴漢と暴行の罪で捕まった。

 会社も倒産して俺は何もかもを失った。

 俺は薄暗く閉鎖された留置所で毎日毎日自分を責め続けた。

「俺は死んだ方がいい…俺は死んだ方がいい…俺は死んだ方がいい…」

 俺は何回も何回も反芻した。

 俺はなんのために生まれたのだうろか…

 俺はボソッと呟く…

 差し出されたご飯も食べずに俺はボーッと壁をみつめる。

 次第に俺は過去の記憶を心の奥深くに閉じ込めて

 全てを消し去り、新しい人格を形成した。

 それがお前だ。

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