花天月地【第65話 歪む天と地の轍、尾びる星】

七海ポルカ

第1話








陸議りくぎさま』








 誰かが呼んだ。



 一瞬誰の名前だっただろうかと思い、ふと目を覚ました。


 自分の名前だ。


 長い間、不思議と忘れていたような気がした。


 寝台で身を起こす。

 周囲を見ると、見慣れない場所にいた。

 

(どこだろう?)


 いつもの癖で双剣を探す。

 遠征の時は特に、寝る時も枕元に置くのに見当たらなかった。


 探しているうちに声が聞こえて来て、

 扉が叩かれた。

 声を待たず、人が入って来る。


 振り返った陸議は驚いた。



伯言はくげん、起きていたか。良かった、どうか落ち着いて聞いてくれ」



 呆然としているように見えたのだろうか、その人は歩み寄って来ると、落ち着かせるように陸議の身体を両腕で抱きしめ、背を撫でてくれた。




袁術えんじゅつが攻めて来る」




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