木こりのトール、「スライム」を装備して勇者を目指す。――武器が装備できない先天的状態異常の俺は親の後を継いで木こりになったが、森の中で一匹のスライムと出会ったことで冒険者への道が再び拓けることに!
永礼 経
プロローグ 森に響く剣戟の音
青狼暦658年11月上旬。
クリレール王国北方の森にて――。
森の木々の間から、先程から数合にわたる剣戟の音が響いている。
その音は、金属と金属がぶつかり合う衝突音ではなく、それよりもやや甲高い鐘の音のようにも聞こえた。
そう、まるで割れることのないガラスと金属の棒を打ち鳴らしたかのようにキィンと空気に澄入るように響く音。人が聞けば、まさしくどこかの教会の鐘の音かと耳を疑うであろう。
しかし、この音を聞くものは周囲には誰もいない。
今この場にあるのは、一人の青年と、一柱の魔将――。
キィン――!
と、一段と高く音が響き渡ったのを合図に、魔将が言葉を発する。
「――これまでか。いや、いい勝負だった。これが『楽しい』というものなのだろうな……」
魔将は、膝をつき、剣を傍らに落として言った。
その表情は晴れ晴れとし、もはや悔恨の色は皆無だった。
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