兎だけど逃げスキルで生き延びます!
@Azena
第1話
種族――それは、この世界に存在するすべての生物が持つもの。
人間にも、動物にも、植物にすら「種族」はある。
――そして、僕「ラビ・クラノル」にも、当然それはあった。
【種族:兎】
【固有スキル:フライジャンプ】
……見た目どおり、僕はうさぎだ。
耳は長いし、足もちょっと速い。でも、力はないし、魔法も使えない。
モンスターに出くわしたら、基本逃げる。それが“兎族”ってやつ。
そんな僕の固有スキル――【フライジャンプ】。
空中でジャンプできる。しかも連続で。
ただそれだけのスキル。
正直、戦いで役に立つかって言われたら――「うーん……」ってなる。
でも、僕は思った。
「これ、逃げるのにも移動するのにも、めちゃくちゃ使えるじゃん」
襲われたら即ジャンプ。
穴があっても即ジャンプ。
壁があっても即ジャンプ。
ヤバい状況なら、とにかく飛んで逃げる。
と、その時ふと気づいた…
「……やば。水、飲んでないじゃん僕」
森の中をとぼとぼ歩きながら、僕は辺りを見回す。
だけど、水の気配なんてまるでない。
川の音も、泉のキラキラも、なし。
「……まさか、干からびて死ぬとかある?」
戦って死ぬより地味だけど、それはそれで最悪だ。
このままじゃ、フライジャンプだって使えなくなる。
だって、あれ――体力めっちゃ使うんだよ。
「うーん……上から見れば何か見えるかも?」
ちょっと悩んでから、僕は【フライジャンプ】を使った。
ふわっ、と体が軽くなって、空中へ――ぴょん。
一回。二回。三回……よし、木の上まで来た!
木々の隙間から、遠くを見渡す。
「……あった!」
森の向こう、ちょっと開けた場所。
キラッと光る――水面だ!
「やった! あれ絶対、水だ!」
……ただし、ちょっと遠い。
そして――モンスターも、いるっぽい。
「うぅ……せっかく見つけたのに、素直に行けないなんて……」
でも、行くしかないよね。
喉の乾きが限界なんだもん。
「フライジャンプ、温存しつつ行くか……」
僕は覚悟を決めて、木の上から地面にひらりと飛び降りた。
兎だけど逃げスキルで生き延びます! @Azena
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