追放と新ギルド
第1話 追放された冒険者
――ギィン!
金属がぶつかる甲高い音が、薄暗い石造りの通路に響いた。
俺は短剣を握りしめ、必死に目の前のゴブリンへ刃を突き出す。
刃先が奴の肩に食い込み、緑色の体液が飛び散った。
「悠、下がってろ!」
前衛の剣士が怒鳴る。俺は慌てて後退し、後方から支援魔法をかける。
――本来の俺の役目は支援。だけど、今日は人手不足で前に出ざるを得なかった。それが、怖かった。
この自然ダンジョンは危険度C。本来なら、もっと場数を踏んだパーティが来るべき場所だ。だけど、俺たちのギルド「レイヴン」は中小ギルド。
人数も足りず、実力も中途半端。こうして無理をしてでも攻略しないと、仕事がなくなる。
――なのに。
「っ!?」
足元で何かが沈む感覚。次の瞬間、床が崩れ、仕掛けられた罠が作動した。
鋭い槍が壁から飛び出し、仲間のタンクが悲鳴を上げる。
「クソッ、悠! お前が確認したんじゃなかったのか!?」
「ご、ごめん……!」
俺のせいだ。見逃していた。確認が甘かった。パーティ全員が動揺し、陣形が崩れる。そのままゴブリンの群れが襲いかかり――俺たちは、撤退するしかなかった。
ギルドに戻ると、マスターが待っていた。無精髭の中年男。机に肘をつき、こちらを見下ろすような目を向けてくる。
「悠。……お前はもういい」
「……え?」
「今日の件でわかっただろう。お前は戦力にならない」
その言葉は、胸の奥に鋭い刃のように突き刺さった。
「次の任務には連れていかない。悪いが、レイヴンを出ていってくれ」
反論なんてできなかった。だって俺が、役立たずなのは事実だから。
街を一人歩く。明るい看板の下では、配信モニターが人々を集めていた。スクリーンには、人気ギルドがダンジョンを攻略する様子が映ってる。わいわいとコメントが流れ、観客たちが笑っている。
――俺だって、ああなりたかったのかな。
でも、今の俺じゃ無理だ。誰も俺なんか必要としない。
狭いアパートの一室に戻り、古びたPCを立ち上げる。ダンジョン関連の掲示板をなんとなく眺めていると、ひときわ目を引くスレッドがあった。
【速報】
賢者が新ギルドメンバー募集!
世界初のダンジョン生成に成功した冒険者が新たなギルド設立!
配信と攻略、両立できる冒険者を求む!
賢者――約16年前、ダンジョン生成に成功した伝説の冒険者。
そんな人物が、なぜ今さら……?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後まで読んでくださりありがとうございます。
よかったらフォロー、⭐︎、♡お願いします。
ダンジョン危険度S〜F級
冒険者ランクS〜F級
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます