1並木道

@amagaminomikoto

第一章:二人で歩いた並木道

日が暮れるのが早くなって来た、それと同時に心に


ぽっかりと空いた穴がより一層、深く冷たく感じる様になった秋の風が街路樹の葉を揺らす


その季節は毎年「みこと」に寂しさを運んでくる


二人で歩いた並木道は葉を落とし冬の足音を静かに聞かせていた葉は乾いた音を立ててアスファルトの上を転がり寂しげな音を奏でていた「みこと」はコートの襟を立ててマフラーに顔をうずめ彼と二人で歩いた並木道を一人で歩いていた


「もうすぐ冬がやって来るってゆうのに」


風に乗って彼の声が聞こえてくる様な気がした叶う事のなかった約束


楽しかった日々は、もう遠い過去あの温かい手は


もう、ここにはない空から突然に大粒の雨が降り始めた「みこと」は傘を持っていなかった立ち止まる事もなく


ただ雨に打たれながら歩き続ける、まるで、あの日の自分だ雨粒が頬を伝い涙と混じり合う


「ねぇ「みこと」雪が積もったらさスキーに行こうよ」


彼は、そう言って笑っていた


「今度のんびりと温泉にでも行こうね」


彼は、そう口にしていた、そんな叶うことのない約束


今「みこと」の心を占めるのは彼に逢いたくて


もう逢えなくて、どうしようもない切ない気持ちだけだった


その事実が「みこと」の心を深く抉った立ち止まって空を見上げると雨は、いつの間にか止んでいた


雲間から月明かりが差し込み街を照らす皓月の下に広がる幽玄な世界


彼と手を繋いで歩いた思い出が鮮やかに蘇る楽しかった日々


笑い合った時間、二人で紡いだ想いで心は満たされて、いるのに彼の姿は何処にもない


夜空に一つ流れ星が光った願いを、かける間もなく


消えていった代わりに空には静かに白銀の月光が輝いている降り注ぐ月の雫


彼と二人で紡いだ思い出が溢れ出す一人でいるのが


こんなにも寂しいなんて知らなかった夢の中で彼が隣にいる様な気がして目が覚めると、また一人だと気づく


また夜になり一人で眠りにつくと夢の中に彼が現れる


いつもと同じ優しい笑顔で「みこと」に寄り添ってくれる夢の中の彼は


もう、いない彼と重なって「みこと」の心を締めつけた


「時が止まるまで君を忘れない」


色褪せた彼の言葉が「みこと」の心を締めつける


いつか君と交わした約束を忘れない様に今はもう彼の


いない、この世界で時が止まるまで、この想いを胸に「みこと」は歩き続ける

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