第9話


いつも、夢に見ていた。

いつかーー家族に認めてもらえる日を。


毎回お呼ばれしたときには、その度に舞い上がっていた。


「お父様に会えるわ!!」


そう言って。

けれど、毎回その期待は切り捨てられるのだった。


父親の、興味のないかのようなそぶり。兄弟の、冷たい視線と陰口。そのどれもが、私を歓迎していないことを示していた。


王城を歩くと、たいていはメイドたちから「どなたかしら」と視線を向けられた。街を歩くと、毎回「どなたですか」と聞かれた。

その様子を見て、兄弟たちは私に言ったのだ。



「忘れられた王女」と。



なぜ、こんなにも愛されないのか。全ては、お母様のせいだと決めつけていた。

兄弟たちから疎まれるのはわかっていた。

母は後から来た第三妃のくせに、国王の寵愛を一身に受けていた。そのせいで、王妃、第一妃、第二妃ーーそのどなたもが、嘆き妬んだに違いない。


そして、第一妃は、自殺しようとまでした。

第二妃は、今こそ一身に寵愛を受けているが、あまりいたたまれない様子だ。ーーきっと、まだ国王の心には、私の母ーー第三妃マーガレットがいるのだろう。


そんなお母様も、私と同じピンク色の髪をしていた。ただ、私のようにくすんだ色ではなく、はっきりとした美しい色だった。


けれど、王族の血はみな金髪だ。

しかし、私は母に似た。ピンクを持って。


「せめて金髪に染めたらいいんじゃないか?」


アレクに言われたことがある。

けれど、それでも、母親から譲り受けたこの髪色を守ろうと思っていた。


母のせいで虐げられても、母を大事に思っていたし、だから母の遺品を守ってまでいつも鞭を我慢していた。


お母様がいる頃は、幸せだった。

クレア邸は人でにぎわい、その城下も発達した。マーガレットは人々から愛される存在で、その娘である私も必然的だった。


母が、亡くなるまでは。


「ねぇ、お母様」


昔、一度だけ聞いたことがある。


「私の髪色は、どうしてピンクなの?」


それにお母様みたいに綺麗でもないわ、というと、母は笑って答えた。


「セレスティナは私に似た、それだけよ」


ーー私に似ただけよかったわ。


彼女は、そのあとそんなことも言ったっけ。当時の私は、母が綺麗だからだと思い込んでいたけれどーー。


「あれは、どういう意味だったのかしら」


最後の父の言葉と、どうしても繋がるような気がしてならない。

きっと、知っているのは父だけだ。

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