嶌犬

ナオサカ下僕

嶌犬

弱さを秘めるものに阻まれたる己に

諦めろ等と言えようものか

踏み出す一歩が欲しいのに


あのセミの鳴く日

やたらミミズがでるみちのりの

帯びたる輻射熱ふくしゃねつにあてられ

安いゴムサンダルかの如く

けては付いた、かの魂が未だ無い。


あの日に置いてきたものの代わりを成すは

ウォークマン越しの三文字群衆

イキロ、キボウ、シヌナ。

漠然とし過ぎて噛み砕けもしない

綺麗事で満たされたる腹は

とうに食傷しょくしょうで、つまずく度込み上げるは胃からのシニタイだった。


それを気付かぬふりで済ましては、

処方箋だと言い聞かせた成功者の人生賛歌を

耳にこしらえ、姿無き向こうの声に踊る。


アオクサ愚直ぐちょく礼讃らいさん中毒

消費期限切れのキボウで肥やした餓鬼が

鏡を見らば、よく見える。

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嶌犬 ナオサカ下僕 @saito_zuizui

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