僕の初恋、明日にはいない君へ

でくのぼう

思い出、出会い、そして別れ…


これは、ぼく小学生しょうがくせいのころのはなしだ。


学校がっこうかえみち本当ほんとうはまっすぐるようわれていた。でも、放課後ほうかご友達ともだちがこうさそってきた。


「なぁ!めっちゃ木苺きいちごがある公園こうえんってるんだけど、こう!」


下校時間げこうじかんは4門限もんげんは5一度家いちどいえかえってからではわない。でも、ぼくはこれまでも何度なんどか、いつけをやぶっていた。今回こんかいも、そのひとつだった。


「まじで!こう!」


その公園こうえん校区外こうくがいらしい。でも、校区外こうくがいるのもこれがはじめてじゃない。


住宅街じゅうたくがいを抜け、やがてもりにたどり着いた。


「ここ?もりじゃん」


「いや、ここじゃない。こっちに階段かいだんがあって、そのさきだよ」


木々きぎかくれてえなかったが、たしかに階段かいだんがあった。きゅう坂道さかみちだったけど、友達ともだち一緒いっしょなら平気へいきだった。


「ここだよ!」


階段かいだんのぼってもりけると、そこには人気ひとけのない。そして、ぽつんと公園こうえんがあった。


その公園こうえんには、ひとりのおんながいた。


彼女かのじょつけて、友達ともだちう。


「お!今日きょうもいたんだ! あの木苺きいちご場所ばしょおしえてくれたんだ!」


その色白いろじろで、とても美人びじんだった。友達ともだちて、ニコッとわらう。


――ぼくは、一瞬いっしゅんこいをした。

彼女かのじょぼくたちよりすこ年上としうええた。でも、仲良なかよくなるのに時間じかんはかからなかった。


一緒いっしょにブランコに2人乗ふたりの

かくれんぼもして

遊具ゆうぐ豊富ほうふかくれる場所ばしょにはこまらなかった


意外いがいにベンチのしたつかりにくいとか

外壁がいへきうしろは禁止きんしだとか

そのいわく

した一番いちばんつからないらしい


つかれたら木苺きいちごべて休憩きゅうけい

本当ほんとうたのしかった


それから、ぼくたちは毎日まいにちその公園こうえんに通うようになった。



公園こうえんには遊具ゆうぐ木苺きいちごもある。そして、なにより、あのがいる。


たぶん、友達ともだち彼女かのじょのことが好きなんだろう。ぼくにはかった。

彼女かのじょだれきなんだろう…


ある彼女かのじょいてきた。


二人ふたり名前なまえは?」


そういえば、ぼくたちは名乗なのってすらいなかった。


ぼく相馬そうま


おれ昇太しょうただよ。きみは?」


わたし? わたしは…美月みつきだよ」


彼女かのじょ名前なまえは、美月みつきさん。


もっとりたくて、誕生日たんじょうびきなものをいた。でも、ほとんどおしえてもらえなかった。ただひとつ、「木苺きいちごき」だということだけは、おしえてくれた。


あるぼくいてみた。


「どうして、昇太しょうたぼく木苺きいちご場所ばしょを教えてくれたの? きなら、ひとめしたくならない?」


美月みつきさんはわらってこたえた。


「んー、きだけど、それよりもみんなにってほしいんだよね。ここ、あんまりひとが来ないからさ」


「いつからここにいるの?」


「もうちいさいころから

ずっといるよ」


ぼくちいさいころかよってた公園こうえんがあった、けどすぐきちゃったんだ

それなのに美月みつきさんは、

ちいさいころからいるなんて

本当ほんとう木苺きいちごきなんだなっておもった。


そして

彼女かのじょがそれをおしえてくれたことが、ぼくはとてもうれしかった。


みんなであそんでいると、あっというくらくなる。


「やべっ! 俺(お!)もうかえらないとかあちゃんに怒られる!」


「うわっ、本当ほんとうだ! かえらなきゃ!」


美月みつきさんはった。


「もうかえるの? そっか……わたしはずっとここにいるから、またいにて」


「また明日あしたね!」


そう言って、ぼぬたちはいえかえった。



つぎぼく風邪かぜいてしまい、公園こうえんけなかった。


かなくちゃ……」


きたくてたまらなかったけど、おかあさんにめられた。


つぎ体調たいちょうはすっかりくなって、学校がっこうへ。


すると、先生せんせいった。


授業じゅぎょうまえに……昨日きのうから昇太しょうたくんがいえかえっていないみたいです。なにっているひとは、先生せんせいはなしてください」


教室きょうしつがざわめいた。


おや喧嘩けんかしたのかな?」


「でも、あいつおや仲良なかよかったよな」


相馬そうまくん、仲良なかよかったよね?」


先生せんせいぼくいてきた。


ぼくは、正直しょうじきはなした。校区外こうくがいっていたことも。おこられるかとおもったけど、先生せんせいやさしくった。


正直しょうじきってくれてありがとう。でももう、かないようにね」


ぼくは、公園こうえんきたかった。でも、行方不明ゆくえふめいけん集団下校しゅうだんげこうになり、けなくなった。


数日後すうじつご先生せんせいおもくちひらいた。


昇太しょうたくんが……遺体いたい発見はっけんされたそうです」


ぼくは、あたまが真っまっしろになった。そのあとのことは、あまりおぼえていない。


いえかえって、テレビをつけるとニュースがながれていた。


山萩やまはぎ公園こうえん男児だんじ遺体いたい発見はっけんされた事件じけんについて、速報そくほうです」


――ぼくかよっていた、あの公園こうえんだ。


今回こんかいにもたれかるようにして発見はっけんされた男児だんじ遺体いたいほか

したに、

あらたな人骨じんこつまっているのが発見はっけんされました。

遺留品いりゅうひんなどから、8年前ねんまえ行方ゆくえ不明ふめいになっていた渡辺わたなべ美月みつきさんのものと捜査そうさすすめています。

つぎのニュースです。」



ぼく大人おとなになり、おぼん帰省きせい実家じっかへ戻った。


ふと、あのことをおもした。


公園こうえん……いまどうなってるんだろう」


みんなは気味きみわるがるが

ぼくにはたのしかったおも

あんなことがきてしまったのは残念ざんねんだけど…

ぼくともだちにいに


もしかしたら、おはかのようなものがっているかもしれない。そうおもい、わせに(い)行くことにした。


「くそ……あんまりうごいてなかったから、階段かいだんがきついな」


階段かいだんのぼったさきには、たくさんのビルがっていた。土地とち開発かいはつすすんでいたのだ。


「これじゃ、もう場所ばしょも分からないな……」


それでも記憶きおくたよりに、あるいてみる。


階段かいだんのぼって右奥みぎおくのほうだったな……なら、こっちか」


――あった。


ひと区画くかくだけ、開発かいはつされていない土地とちのこっていた。


そこには木苺きいちごと、ちいさなおはか


そのまえには、すでにおまいりしているひとがいた。


ぼく同年代どうねんだいくらいの男性だんせいと、すこ年上としうえ女性じょせい


邪魔じゃまかな、とおもいつつも、ぼくわせた。


昇太しょうた……おまえきだったメロンジュースだよ。美月みつきさん、木苺きいちごはここのえてるから、イチゴをってきたよ」


そうつぶやいていると、さきていた男性だんせいがこちらをいて、った。


「……なんで、あのなかったんだよ」

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僕の初恋、明日にはいない君へ でくのぼう @DekunoBou-

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