イヤホンデイズ 2
僕の元へ飛び込んで来た少女はガシッと抱きつき、興味津々に目を輝かせながら
僕の方を見つめてきた。
寝癖のついた黒髪、口元にはヨダレの跡が残っている。桃色に白のチェック地が可愛らしいパジャマは所々乱れていて、寝相の悪さが窺える。
「いつも通りトーストと目玉焼き」
「トーストと目玉焼きぃぃっ!!?」
少女は朝食のメニューを聞くや否や僕に抱きつくのをやめ、がっくしと項垂れた。どうやら、お気に召さなかったらしい。
「朝食はご飯派だっていつも言ってんじゃーん…。白いご飯食べないと元気でないんだってー」
「オレはトーストがいいの。弁当はきっちり作ってるからそれでいいじゃないか」
「よくないよっ!! 朝こそ、しっかり栄養のあるものを食べてエネルギー蓄えなきゃじゃん!! じゃないと部活も出来ないよ!!」
「じゃあ、お前が朝食作れよ」
「うっ……」
少女の威勢は急に衰え、反論する言葉に詰まったようだった。…本当に料理が苦手なんだな。
いつぞやか少女が自分で作ったご飯を食べてるのを見たことがあるが、食べた本人が顔を青くしていたのを見る限り、自分で食べても美味しくないレベルだったんだろう。
「うぅ…。明日は絶対和食にしてよねっ!!」
気が向いたらなー、と僕は適当に答え、コーヒーを飲みながらスッと少女の後ろにある壁時計を指さした。
その様子を怪訝そうな顔で見つめながら、少女はゆっくり後ろを振り返り僕の指差す方に目を向けた。
ー7:40ー
思考停止したかのように少女は数秒固まった後、ビクンと体を動かし絶叫した。
「あああああああああああ!!!!!!!! 遅刻ッッッ!!!!!めっちゃくちゃ遅刻じゃんんんんんッッ!!!!!!!どうして起こしてくれなかったのぉぉ!!!?」
叫ぶや否や僕の方に振り返り、両手の拳を握りしめ恨めしげに僕を睨みつけて言った。
「今日は朝練あるからって寝る前に言ったじゃん!! 起こしてって!!」
「自分で目覚ましセットして置かない方が悪いだろ」
「あーもう!! ばかばかばかばかっっ!!!!」
早口でまくし立て僕を責めるが、僕には全く持って関係の無いことだ。
少女は、ヤバイヤバイヤバイ、と独り言を言いながらテーブルのトーストを手に取りリビングを後にした。どうやら盛大な足音を立てながら部屋に戻って行ったようだ。
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