第35話
ルマンダさんにお姉さんの話を聞いているリディアは、もうふわふわと言う感じだ。アカネも「あんなリディは見たことない」という。
なんか、そのままお姉さんの元まで飛んで行きそうな気がする。
みんないつまでも一緒というわけにはいかないんだろうな。
いつか、別れが来る。
そんな感傷に浸っていると、サファリの風は「今日の仕事を片付けてくる」と帰って行った。
「リディ、王都に行きとーなったとちゃうか?」
アカネが揶揄うように言う。
「行かないわよ。まだ、そんなレベルじゃない」
「そうなんか?」
「姉は州都の魔法学校にいた頃から首席の優等生だった。いま会っても笑い物よ」「会う時には対等くらいになっておかないと…」
「アカネ、安心した?」
ミロが珍しくアカネを揶揄う。
「正直な、、、。ウチかてリディと別れたない」
「ワタシもみんなと別れたくないもん」
「僕もだ」
今日はみんなで魔法の練習をしようと話あっていた。
先日、ゴブリンと遭遇した森に行き、ミロとアカネは水球の練習、僕は風球がまっすぐ飛ぶように試行錯誤。リディアは先生だ。
僕は風球を作って飛ばす。
「本当、途中で全部左に曲がるわね」
「うん。風球そのものが周囲の空気を巻き込んで回転してるから、左右の回転方向の違いから曲がるのは仕方ないのかもしれない。でも途中まではほぼ真っ直ぐ飛んでるから、なぜそれを持続できないのか」
「そうねぇ…。こうして観察してみたらどうかしら」
そう言うと、リディアが杖を操作し、試し撃ちしてる方向に煙が発生した。
「目眩し用の粉塵魔法よ。火魔法は撃ち込まないで」
風球を撃ち込んでまると、煙が空気の流れに巻き込まれるように渦巻いているのが肉眼で分かる。
「これは分かりやすい!」「リディアは多才だなぁ」
「引きこもりだった私は、姉がくれる魔法書ばかり読んでたからね」
何発か撃ち込んでみると、風球が曲がる辺りから煙の乱れ方が変わるのは分かった。
土球を回転させて撃ち出してみると、煙の中で軌跡が残るので、これも緩やかに曲がっていたことが分かった。
最後に土球に回転を加えず撃ち出した。回転したのとは違う変化があった。
「リディアありがとう。課題は見えてきた」
「物理的に撃ち出すと言うことは、周りにある空気との摩擦は避けられないのは分かった。それについて考えてみるよ」
「敵への命中率が高い魔法ってあるのかな?」
「この間、魔法陣は見たわよね。魔法陣から魔法を撃つこともできれば、魔法陣のある場所に必ず落とすこともできる」
「魔法陣を相手の体にくっ付ければ理論上は可能。でも難易度はかなり高いわよ」
「それ以外は鍛錬のみ、ね」
「ありがとう。参考なったよ」
魔法陣かぁ。ハードルは高そうだけど、前に仲間がいるとどうしても魔法を躊躇してしまう。
リディアのスキルに魔法陣修練というのがあったから練習してみる価値はあるかもしれない。
「やったでー」
とアカネの声がした。
アカネの手のひらの上で水の塊が浮いている。
「アカネに負けたー」悔しがるミロ。
「冒険者1年先輩の意地を見せたったでぇ」
ミロの手のひらにも、水が高く盛り上がっている。あと少しの差。
「これはこれで、プリンみたいで美味しそうだ」
「プリン?」
「プリンって、なんだろう?」
「前世の記憶?」
ミロも僕の奇行に慣れてきたみたいだ。
「なんか、そうみたい」
「ぷりんっ、て、何や可愛らしい名前やなぁ」
「んー、何か食べ物の名前?のような気がする」
「美味しそうな名前だね、なんか」
ミロも興味がわいたみたいだ。
「思い出してみるよ」
魔法の練習を終えてキャンプ場に戻ると、テントに貼り紙がされており、
『4人揃って冒険者ギルドに来て欲しい ルマンダ』
とある。
「昨日の件かな?」
とりあえず4人で冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに到着すると、ライオネンさん、ルマンダさん、ギルマス、そして見知らぬ男性がテーブルを囲んでいた。ガナさん、ケニーさんは隣のテーブルにいる。
ライオネンさんが立ち上がり、「よく来てくれた」
「彼ら無くして今回の捕物は成功しなかった。だから我々の報酬の半分を彼らに」
見知らぬ男性が立ち上がる。僕たちの所に来て、
「訳あって身分は明かせませんが、この度の活躍に感謝します。報酬はギルドマスターに預けてありますのでお受け取りください」
男は深く頭を下げると、
「では私はこれで失礼します」
と去って行った。
「まったく君たちにはいつも驚かされるよ」
ギルマスはそう言うと、何やらずっしりした袋を渡してきた。
お金であろうことは想像できる。問題はその膨らみと重み。
銀貨がこれだけあったら、普通は金貨に換金する。
「金貨100枚だ。4人で分けてくれ。あと、ギルドポイントが先日の探索隊のを合わせて各自320ポイントずつあるから受付で受け取ってくれたまえ」
「それと、探索隊の報酬金だけはもう少し待ってくれ、まだ議会を通ってないんだ」
「なぁ、ウチら見とっただけやのに貰ってええんやろか?」
アカネがリディアに問いかける。
「良いに決まってるじゃないか。それがチームだ」
ライオネンさんが吼えた。
もちろん僕も異論はない。それよりAランク冒険者の報酬額に驚いた。
「そうだとも。そろそろチーム名も決めたらどうだね?その方がギルドとしても事務処理が捗る」
「チーム名か、そんなの話したことなかったね」
「そやなー」
「リディアは何か良い案はないの?」
「わ、私にふらないで」
すぐには決まりそうにもない。
その前に冒険者ポイントを忘れず受け取っておくことにする。
先ほどの説明以外に、僕とリディアにはゴブリンの報告報酬が3ポイントの加算があった。
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