炎暑
音央とお
1
体温超えの危険な暑さ、連日ニュースはその話題で持ちきり。当然のように日が暮れても熱帯夜続きで思考回路もおかしくなっちゃいそう。
「アイス買って帰ろうかな」
忙しかったバイトのご褒美にコンビニアイスを買っちゃおう。たまにはこんな日もなけりゃ、やってらんないもんね。
家の近所のコンビニに入ると、ひんやりとした冷房が気持ち良い。
何気なく雑誌コーナーに目を向けると「あっ」という大きな声が聞こえてきた。柄シャツに丸形のサングラスという治安の悪そうな男がこちらに人差し指を向ける。
「なっちゃんじゃーん!え?なんでここにいるの?」
……最悪。
「ちょっと静かにして、ここお店の中だよ」
かなり酔っ払っている様子の新城に小声で注意する。へらへら笑いながら頷いているけど、理解できているのか?
「んー? じゃあ、なっちゃんの家に行こう!」
「なんでよ」
「まだ飲みたいんだもーん。なっちゃんの家って近かったでしょ? 一緒に飲もうよ!」
大学の友達数人でたこパした時のことを覚えていたらしい。しかし、女の一人暮らしに男を招き入れるなんておかしくない?
「無理」
「冷たーい。俺はなっちゃんの家に行くのぉ!」
「本当に煩いから黙って!」
レジの若い店員がウザそうにこちらを見ていることに気付いた。店内で騒がれたら迷惑だろう。……ああ、もう〜っ!
「終電前には帰ってよ? 約束できるなら来ていいよ」
とっても不本意だけど!
新城は表情をさらにふにゃふにゃにして「うん!」と返事をした。
これ以上飲ませて良いのかとも思うけど、数本の缶チューハイと2人分のアイスを買ってコンビニを出た。意外と足取りはしっかりしているものの、のんびりと歩く新城の速度に合わせて歩く。
「今日って飲み会だったの?」
「そうそう、阿川主催でねー。まあ、合コンってやつですよ」
新城がよく
今日の様子も簡単に想像できてため息を吐く。
「アンタ、彼女いるじゃん」
「んー? ふふふ」
「笑って誤魔化すな」
呼ばれれば平気で顔を出すのが新城という男で、彼女が可哀想だ。
5分も歩けばアパートに着いてしまうので、物音を立てないように階段を上がっていく。鍵を回しドアを開き、電気を点けようとしたのだけどそれは叶わなかった。
「ちょっと……!」
後ろから寄りかかるように抱きしめられて、身動きが取れない。
無言なのは具合が悪くなったんだろうか。
「何? もしかして気持ち悪いの?」
「……そうかも。ちょっと横になっていい?」
「もう! 飲み過ぎだよ!」
解放されたので慌てて洗面器を取りに行く。
その間に新城はラグの上に寝そべっていて、片手で目元を覆っていた。
「クッション使う? 水でも飲む?」
「うん、ちょうだい」
せっせと準備をする。ついでにアイスと飲み物を拾って冷蔵庫に入れた。
「……」
冷蔵庫のドアに触れたまま、ドキドキと高鳴っている胸を落ち着かせようと深呼吸をした。
……びっくりした。びっくりしすぎて目が回りそうな気分。
落ち着け、相手は酔っぱらいだ。
酔っぱらい過ぎて本人も何をしているのか理解していない……と思う。この状況は普通ありえないでしょう!
だって、
私は新城に一度振られているんだから。
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