あのとき拾った雑誌が、未来を変えた

「信じてる」――
その言葉が、どこか遠くに感じられていた。
他人から期待される「優等生」として、完璧に振る舞ってきた遥は、
放課後の音楽室で、ふと現実のひび割れに触れる。

クラスで浮いていた同級生・篠原。
彼女が落とした一冊のゲーム雑誌が、
遥を静かに、そして確かに、別の世界へと誘う。

《Lunaphelle Online》。
月に照らされた幻想世界、
匿名のまま交わされる挨拶と、BGMに溶けるようなピアノの旋律。
現実では出会えなかった言葉と温度が、そこにはあった。

クエストを追い、素材を集め、
誰かの助けを借りながら、少しずつ進む物語の中で、
遥は次第に、「本当の自分」の輪郭を取り戻していく。

傷つけられることを恐れ、
誰にも本音を明かせなかった日々に、もしも終わりがあるとしたら。
それは、仮想世界の片隅から始まる小さな出会いなのかもしれない。

これは、声にならない孤独と、言葉にならない救いの物語。

その他のおすすめレビュー

法王院 優希さんの他のおすすめレビュー1,070