Episode 10 :【黎明告げる銃声】
――この数年間、俺は
そのため、〈アフターエリア〉の状況がどう変化したのか……それを知る手段は、液晶画面越しのニュース映像だけだった。
数年ぶりに、直接この目で見渡す、外の世界――。
そこには、俺の
崩れかけたビル群からは
まさに、
本来なら聞き馴染みのないその言葉に、これほど現実味を覚えたのは、初めてだ。
【ギジジジジジジ……ッ!!】
その
俺の身長の3倍はある(俺が172センチだから、ざっと5メートル越えか)巨大な体躯。
その肉体は、
特徴的なその外見は、スズメバチを彷彿とさせるものだ。
その
するとその巣穴から、無数の蜂型爆弾が、爆音と共に発射される。
――ドガガガァァン!!
発射された爆弾が着弾し、倒壊しかけたビルが、爆風に包まれた。
成程……あの蜂の巣は、ロケットランチャーに近い性質の兵器らしい。
『グロテスクな見た目のクセに、妙に男心をくすぐる装備だな』……なんて、呑気に観察をしている場合ではなさそうだ。
【ギジジ……ジギィ……!】
巨大蜂の複眼が、俺を捉えた。
奴ははっきりと、俺の存在を認識し、次の標的に定めた。
交戦状態になったからか、奴のギロチンのような口は不気味に動き、騒々しい羽音を奏で始める。
――だとすれば、話は早い。先手必勝だ。
《
そして
――ドガガガガァァァァン!!!
レーザーは見事命中し、巣の中の〝蜂爆弾〟が、誘爆を起こす。
【ギシャアアアアアアッ!!】
だが、これで終わる相手ではないらしい。
奴は金切り声のような悲鳴を上げながら、反撃に出る。
――バゴォン!! ドゴォン!!
右腕の巣から、立て続けに発射される蜂爆弾。
俺は瞬時に弧を描くように走り、
どうやら、
その
手に
手ごたえから察するに、どうやら効果ありのようだ。
(……よし)
――ドゴォツ!! ボゴオッ!!
ここぞとばかりに、
一瞬の隙も見せることなく、
【ギジジィ……!!】
怒りに駆られた巨大蜂が、俺を包み込むかのように、両腕の巣を構える。
――バシュウ、バシュウ!!
爆風の中、俺は《HERO》を構え、さらなる追撃を仕掛ける。
【ギジャザァアア!!】
耳を
自分より遥かに小さい俺に
だがそれでも、奴の攻撃の破壊力は、凄まじい。
このまま長引かせれば、無関係な被害が広がる。
そんなお粗末な展開、望んでなどいない。
――だからこそ、即断即決、今すぐ奴を排除する。
人差し指を軸に《HERO》をクルクルと回転させた後、歯車のスイッチを押して取り出したバッテリーを、撃鉄の下にあるスロットに装填。
【Warning……Warning……】
《
俺は巨大蜂に向けて、深く呼吸を整えながら、照準を合わせる。
決して焦るな。呼吸は静かに、穏やかなまま――。
【SUPER NOVA.】
――バシュゥウウウウウウウウッ!!!
《HERO》の銃口に
その反動で、足元のアスファルトが砕けるほどの、凄まじい衝撃が俺を襲う。
超巨大なレーザービームは、命中――というより、奴の肉体を完全に飲み込んだ。
――ドガガァアアアアンッ!!
巨大蜂は、断末魔すら発する間もなく、跡形もなく爆散した。
(……初戦にしては、まあ、上出来か)
俺は安堵のため息を
その後、撃鉄のマガジンからバッテリーを取り出し、元の場所に装填し直した。
余談だが、この銃回しは、決してカッコつけなどではない。
心を落ち着かせるために自然と生まれた、
言うなれば、ペン回しの延長線上にある、集中のリズム――そんな感じだ。
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《次回予告》
《撃破の証拠としては、十分すぎる映像だ。》
『〈速報〉〝謎の
その正体は、敵か味方か!?〈必見〉』
《……昔、母さんが言っていた言葉を、思い出す。
花にとって雨とは、成長を
次回――Episode 11 :【戦いを終え、今もなお雨は降る】
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