番外編 小さなエロリスト②

 お風呂上りはもちろん“作法”にのっとって腰に手を当て、コーヒー牛乳をグイっと飲るやる


 本当はフルーツ牛乳がベストなのだが……絶滅してしまったからコーヒー牛乳にシフトしたのだ。ひょっとしたらこれも絶滅危惧種なのかもしれないが……


「ふう」とひといき付いて周りに目が行くと……ベンチにはいつの間にか“ニンフ”が座っている

 ……って!!


 思いっ切り!!フリ◇チンじゃん!!!



 頭の中のさっきのスケッチと相まって

 私、たぶん、石像の小便小僧の絵が描けてしまうと思う……


 つっか、ニンフ、ノート広げてお絵かきしてるし!!


 何? おまんじゅう??


 あられもない自身の姿に対してではなく……そのスケッチブック?に対して注がれている私の視線に“ニンフ”は反応して、描きながら説明してくれた。


「これね……おねーさん!」


 子供らしいフリーハンドで描かれたそれは……おっきいのと少し先細りの丸……顔と胴体?? なんで寝てんの??


「私の事、描いてくれてるの? できれば脚とか手。描いてくれると嬉しいなあ」


「かかないよ! じゆうけんきゅうだもん」とニンフは丸の中にポチンポチンと点を打って……に鼻を鳴らした。


「えっ??!!!」


 私はニンフとスケッチブックの両方に視線を行ったり来たりさせた。

 ざわざわとした心が……私の“コンプレックス”と符合した。


「キャー!!」

 思わず叫んでニンフの手からスケッチブックを奪い取り、パラパラめくると……ページのすべてが!!

 ペアの……いろんな“おまんじゅう”とその上に乗っかる“おまめ”に溢れていた。


「こ、このめが!!!!」


「あー!! おねーさんがしゅくだいとったぁ!!!」


「こんなのが宿題なわけないでしょ!!!」


「じゆうけんきゅうだもん!! だってパパもいっぱいほんかってるもん!じゆうけんきゅうしてるもん! しゅくだいかえせ~!!」


 こいつのオヤジがエロなのか!!

 間違ってもその『親の顔』は見たくないが……


「なになに」と他の大人が寄って来そうなのでやむなくスケッチブックをの手に戻す。


「お母さんは?一緒に来たんでしょ?」


「いない! いつもぼくひとりだもん。パパとは日ようだけ」


 ったく親も風呂屋も管理不行き届きだよ!!

 とにかく!!

 バッチリとコンプレックスを描き写された“私の”だけでも回収せねば……


「ねえ、ボク! そのおねーさんの絵、くれないかな?」


「ぼくじゃないよ、ハルキだよ。しゅくだいだもん。あげないよ!」


 私は引きつりそうな表情を抑えながら言葉を継ぐ


「そお、ごめんね、ハルキくん。でも自由研究ならもっと素敵なものがあるじゃない。昆虫採集とか……」


「コンチュウ?」


「そう、虫捕り! おっきな網で取るの!! カブトムシとかカッコイイでしょ?!」


「しってる!! ヘラクレスオオカブトやコーカサスオオカブト!!」



 私だってカタカナ名前のカブトムシがこの日本に棲息して居るとは思わなかったが、昆虫採集と引き換えに絵の譲渡をする事をハルキに約束させた。

 さて、しかし、どうしたものか……


 私はスマホを見つめ

『クラス委員(和田)』をタップした。



 秒で出た!!


「あ、夏休みごくろーさん」


『どうしたの?田中さん』


「実は成り行きで昆虫採集することになってさ!オトコの子と」


『ええ???!!!』


「いや、そんなに叫ばんでも!! 相手はチビさんだし、いろいろ不安だから……付き合ってくれたらありがたいんだけど……」


『なんだ……びっくりしたぁ~ 場所、決まってるの?』


「ううん!どこに行けばいいのかもわかんない」


『オッケー!! 任せて!』


「ごめんねーせっかくの夏休みに付き合わせてさ」


『全然!! こう見えてもオレ、小学生の時は“虫捕りヨッちゃん”って呼ばれてたんだ!腕が鳴るぜ!! あ、服装は長袖長ズボンな! 色々危ないから』


 こうして図らずも和田くんとをする事となったわけだ……




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