第5話 お疲れ会はデートの予感①

 <今回は和田くん視点です>



 学校の前に横付けされたバスは1台ずつ校内へ入り、生徒を吐き出していく。

 我が3組のバスはどういうわけかで……一番最後に校内へ入り、オレと田中さんはそのまた最後にバスを降りた。


 と、向こうで姉ちゃんが手を振っているのが見えた。


 うわあ~! 何ちゅう保護ヅラ!!


「ひょっとしてあの人、和田くんのお姉さん?」って田中さんに聞かれて止む無く頷くと、田中さんはやわらオレの腕を巻き込んで、姉ちゃんの方へオレをグイグイ引っ張って行く。


 そのいきなりな行動と……が微妙に気がして、オレのアタフタ度合いは半端ない!!


「和田センパイ……ですよね!弟さんをお連れしました!!」


「アハハハ!その様子じゃ、色々面倒を掛けたみたいだね。お礼申し上げます」

 と姉ちゃんはオレに田中さんに深々と頭を下げる。


「私の方こそ!和田センパイが用意して下さった“支援グッズ”はとても役立ちました!本当にありがとうございます」とこちらもオレに当て付けて深々とお辞儀する。


「そう言ってくれると嬉しいよ!もし良かったらアドレスとか交換してくれる? 因みに私の名前は『みずほ』美しいに王編の珠、帆船の帆と書くんだ。キミは田中千景さんでしょ?」


「ハイ!」と田中さんは元気いっぱいに返事をする。オレ、田中さんからこんな返事を貰った事が無い!

 ちょっとばかし憮然としているとジャージの裾を姉ちゃんから引っ張られた。


「顔貸しな!」


 田中さんがクラスメイトの世話を焼いているのを横目で見ながら「オレもクラス委員なんだけど!」と姉ちゃんに抗議する。


「お前なんか殆ど仕事してないだろ?!」


「そんな事ねーよ!」


「そんな事あるの!」と決めつけながら姉ちゃんは自分の財布を出し、中から五千円札を一枚抜き取った。

「ほら!これ!」


「なんだよ!」


「お前、今、そんなにお金持ってないだろ?!」


「そりゃそうだよ!『現金は二千円まで』ってオリエンテーション旅行の規則をクラス委員が破るわけにはいかないじゃん!」


「だから、このお金で千景ちゃんを慰労してやんな!」


「そんな!悪いよ!」


「悪いと思うんなら、夏休みにバイトして返しな!」


「……わかった。ありがと!」


「ああそうだ!行くのは西丸スーパーのフードコートにしな!あそこには先生もから」



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