第3話 このとき姉ちゃんはオレたちがどうなるか知らずに“小石”を投げた②

 でも学校では違うよ。


 “行きがかりの上”であっても……引き受けたクラス委員だ!


 今もバスからみんなを誘導して人数を数えていて……ひとり足りない??


「田中さん! ひとり居ない! バスの中確認してくる」


 そう断ってバスに戻ると後ろの方の座席で揣摩しまさん……あの“壁ドン三人娘”のうちの一人だけど……が顔色悪く俯いていたので急いで駆け寄る。


「クルマ酔い? この席は揺れるしもキツメだからなあ」


 揣摩さんに“いつもの勢い”はまるで無く、辛さそうにオレを見上げる。


「……和田くん……大丈夫だから……ごめんね……人数チェックでしょ。ちゃんと1名居るから……」そう言って軽くオレの手に触れた彼女の指は冷や汗からか何なのか? 妙にひんやりしていてオレはウェストポーチからエチケット袋を取り出して彼女に握らせた。


「すぐ固まるヤツだから……必要だったら使って。手を貸すからいったん出よう!表の空気吸ったほうがいいよ」


「ごめん……あの、私……ホント大丈夫だから……皆のところへ行って」


「……分かった。取りあえず報告とかしてくるけど……」


 せめて席の移動はさせてあげたいけど……男の手じゃ嫌な事もあるかもしれないし……と、オレが逡巡していると揣摩さんは制服のスカートのポケットからスマホを取り出した。


「LIN□交換してくれれば何かあったら連絡する」


 それなら少しは安心だ。オレはQRコードを表示して彼女に読み取らせた。


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