クソミステリー短編集

北 流亡

Q-001.蒼天館の殺人

 死体が、部屋の中央でうつ伏せに横たわっていた。


 探偵天羽柊一あもうしゅういちは現場を荒らさないよう、ゆっくりと死体に近づき懐中電灯で照らした。


「ふむ」


 頭部の横に鉄球が落ちていた。直径10cm強はあろう、かなり大きな物だ。被害者の後頭部には大きなへこみがあった。この鉄球が直撃したことが死因と見て間違いはなさそうだ。


 天羽は部屋を見渡す。

 2つある窓はいずれも内側から鍵がかかっている。扉も、強引に破るまでは、内側から鍵がかかっていた。

 部屋中をくまなく調べたが、抜け穴の類は存在しなかった。


 事件が起きたのは、山の中腹にある2階建ての洋館「蒼天館」の、2階にある一室だ。

 被害者は笛田幸三郎。蒼天館の主人である68歳の老人だ。


 犯人は犯行時刻に唯一アリバイの無かった、使用人の広中明彦であると思われた。

 扉も窓も閉めたままで殺害する。いかなる方法を用いたのか。


「やはり、この方法しか無いようだな」


 探偵はコートのフードを脱ぐと、誰に向けて言うでもなく、呟いた。探偵の一連の動きを注視していた刑事は身震いした。季節は冬に差し掛かろうとしている。

 果たして、犯人はどのようなトリックで被害者を殺害したのだろうか。

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