奇怪創想譚(きかいそうそうたん)

ミミササ

井戸


 これは私の祖父から聞いた話です。

 当時、祖父の知り合いにお金持ちのAと言う人物がいました。

 Aが新しく家を建てたと言うので祖父の知人と共通の知人は仕事終わりにAの新居にお邪魔しました。


 私の祖父は大工をやっており、祖父の知人も大工でしたのでこの話が回って来たそうです(うろ覚え)

 Aの家に着くと立派な一軒家が立っており、中へ入ると既に酒を飲んでいたAに誘われ知人らも酒盛りを始めました。


 酒を飲み始めて数時間、酔いも回ってきたときでした。ある一人の知人が「トイレに行きたいから場所を教えてくれ」と飲み過ぎたようでふらふらになりながら言いました、「2階にはないから1階の端の方にトイレがある」とAが言い、1人で行かせるわけにもいかないので別の知人が同伴してトイレまで同行しました。


 数分後、すっきりしたのか機嫌良く戻って来た2人はAに質問しました。

「A、お前綺麗なお姉さんがいるんだな、今度紹介してくれよ」

 その言葉を聞いた瞬間、その場に居た全員がAの方を見ました。

 Aに美人な姉がいると聞いて興奮気味に質問攻めしました。酔っていたのもあったのでしょう。

 ですが、当人のAは「お姉さん?誰の事だ?」と全く知らない素振りを見せたそうです。

 お姉さんを見たと言う2人は「和室に居た女の人だよ!美人で愛想も良くて、挨拶もしてくれたぞ!」と言っていましたが、家主であるAは「俺は1人子だし、今日はお前たち以外呼んでないぞ」と言うのでこの話は酔いによる幻覚として話が着きました。


 それからです。それからAの家に集まると1階の和室で『美人で愛想の良い女性』を見たと言うのです。しかもそれは1人や2人ではなくAを除く全員が見たと言うのです。

 その女性は決してその場から動かず、愛想よくこちらの話を聞いてくれるそうなのですが、”ある事”に関しては必ず黙りこくるそうです。

 それは”A”に関する事と”ここに居る理由”です、この2つに関しては決して口を開こうとしなかったそうです。


 こんなことが起こっているのにも関わらず、それでも尚も信じないAにしびれを切らした何人かがAに合わせようとしたのです。

 Aが和室に行くと必ずと言って女性がいなくなるので、1人は女性の相手をもう1人がAを連れて会いに行かせようとしたところ、女性の相手をしていた1人が泡を吹いて気絶していたそうです。他にも複数人でやっても同じ結果だったそうです。

 何故、この事を知っているかと言うと気絶したうちの1人は祖父だからです。


 さすがのAも気持ち悪くなったのか、霊感があり大工である祖父に相談しました。

 酔いがさめていた祖父は知人にAの家が建った場所を調べたところ、その家が建つ前に大きな池と井戸があった事がわかりました。

 その事をAに伝えるとAは「そうか……」と言い、とてつもないことを言いました。

 なんとAは井戸の供養やお祓いの金をケチり、そのまま上から埋め立てて家を建てたことが判明したのです。


 その後Aは家を取り壊し、井戸の供養をした後、別の家を建てたそうです。


 以上が祖父から聞いた怖い話でした。

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