本作、所謂JRPGのような、必殺技で魅せたりすごい魔法や道具の力で大活躍したり、という類のものでは決してないです。
ただ、それだけにダンジョンの潜り方へのスタンスや、戦闘での実直さといったものが強く感じられます。
絵面としてはやや地味とすら言われそうですが、個人的にはこの地道さが丁度よく感じます。
だからこそ、パーティメンバーの年齢が高めなのが実にマッチしています。
そう、この渋さはさながら、組めるメンバーを3人に限定したWizardryのような雰囲気です。
若さによる煌めきとはまた違った、じっくりとした雰囲気のダンジョン探索、是非とも楽しんでいただきたいです。
『潜魔窟物語』は、よくある「魔王討伐ファンタジー」ではありません。
勇者たちが魔窟へ挑むその旅路を、派手な必殺技や大仰な演出ではなく、キャラクターたちの“心の動き”を中心に描いていきます。
彼らが抱える不安や迷い、仲間への信頼やわずかな疑念。そうした細やかな感情が、冒険のひとつひとつの場面を確かなものにしています。読んでいるうちに「自分も一緒に潜っている」ような感覚が味わえるのが、この作品の大きな魅力です。
また更新もコンスタントで、物語の流れを途切れずに追えるのも嬉しい点。毎日少しずつダンジョンを進む感覚で読み進められます。
RPGのストーリーを押し付けられるのではなく、キャラクターたちと同じ目線で共感しながら旅を歩みたい方に――おすすめしたい一作です。