髑髏王と枇杷の姫 ㈠髑髏の庭
@beniiro-tamago
0 序幕
宵闇の森の、さらに奥深く。そこには、忘れ去られたようにそびえ立つ、古びた城があった。人々は囁き合った。あの城には、闇の魔力を操る恐ろしい存在が住まうと。死した者が蘇り、生ける者が朽ちていく場所だと。そして、その城の主を、「髑髏王」と呼んで、決して近づこうとしなかった。
しかし、その城はただの廃墟ではなかった。かつて、そこは希望の象徴だった。光を宿す王族が治め、色鮮やかな花々が咲き誇る、美しき城だったのだ。だが、愛する者が奪われ、禁忌の魔術に手を染めたとき、城は闇に染まり、主は人としての感情を失った。
城の主、スカーレット・クロウ。彼は、燃えるような緋色の髪と血のように鮮やかな瞳を持つ、かつては希望と称えられた第二王子だった。愛する兄セルリアンを失った絶望と、禁術の代償によって、彼の心は凍りつき、永い時を生きるだけの存在となった。彼の存在そのものが、城と周囲の生命を蝕む呪いとなり、城の庭園は、見る影もなく枯れ果て、朽ちた木々が虚しく天を衝く、髑髏王の心そのものを映し出す場所と化していた。
しかし、そんな死に包まれた城に、ある日、一人の少女が迷い込む。
彼女の名は、ジェイド・ロウクワット。鮮やかな翡翠色の髪と瞳を持つ、高貴な一族から「異端」として追放された力なき姫だった。ロウクワット一族は、代々、枇杷色の髪と金色の瞳を持つ者だけが、聖なる光の魔法を使うことができると信じていた。だが、ジェイドは、その「証」を持たず、魔力も持たなかったため、蔑まれ、疎まれてきた。しかし、彼女の瞳は、どんな闇の中にも光を見出す、揺るぎない強さを秘めている。
この物語は、すべてを拒絶し、孤独に苛まれる髑髏王と、すべてを受け入れ、ひたむきに温かさを届けようとする異端の姫が出会うところから始まる。彼らの出会いは、偶然か。それとも、遠い昔から定められた運命だったのか。
永い時の中で凍りついた心が、再び動き出すとき、闇に閉ざされた城に、一筋の光が差し込む。
これは、二つの異なる孤独が、互いを癒し、真の愛と、そして新たな希望を見つけるまでの物語である。
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