第35話ミルタザピンの服用で叶った、No Money Dayを作ることについて
※ミルタザピンの服用とその経過は、あくまでも一個人の体験です。私は持病を全てオープンにしているわけではありません。
※薬の服用については自己判断で決めず、用法用量を厳守の上、必ず主治医と相談するようにしてください。
お金を使わない日を一日でも多く作ろうと決めたのは、買い物依存症を克服するためだった。拒食症状が強いと、食べることでも寝ることでもなく、お金を使うことに意識が向いてしまい、散財することがたびたびあった。
それもミルタザピンの服用によって、食欲が戻ってきたことで、お金を使うことから自炊して料理を食べることに意識が向くようになってきた。
それが良いことなのかどうか、私にはわからない。だが、散財をすれば自分自身の首を絞めてしまうことになる。
私が自由に使えるのはお小遣いと、家計から負担してもらっている日用品を買うお金ぐらいで、後者については家計のお金なので浪費はしない。
もっぱら使うのはお小遣いで、自傷行為のようにお小遣いを使い果たしては月末になると困窮し、拒食の病状もそれに伴って悪化する、ということをここ一年弱繰り返してきた。いい加減学んだらどうなんだ、と我ながら思うのだが、拒食症状はそうした思考の柔軟性も奪ってしまう。
ミルタザピンを服用するようになって、毎日泣いたり情緒不安定になる状態からは少し持ち直して、お金を使わなくても精神的に安定できるようになってきた。
No Money Dayという言葉を知ったのは最近になってからのことで、私は手帳にNの頭文字だけを記録して、レコーディングダイエットをする要領でお金の管理をしようと決めた。
お金を使わなかった日には達成感を味わえるのもいい。
日々の家事や、朝方までつづく家族のケアに追われて、疲れてモノを買ってしまうことがあまりに多かったのだが、衝動をやり過ごして、amazonなどのサイトを極力見ないようにして、お金を使わずに手持ちの音源を聴き返したり、再読本を読んだりしていると、それだけで「少なくとも今日はお金を使わなかったし、そうすることで自分も傷つかなかった」という実感を得られるようになってきた。
幸いにも、私が音源を集めているクラシックというジャンルは一度聴けばいいというものではないし、何度も繰り返し頭から終わりまで聴いて味わってこそ価値があるジャンルなので、聴き飽きるということがない。
コンディションによって聴きやすいように、私はプレイリストをいくつも作成して管理していて、最近では2枚組になっていたウィーンフィルハーモニー管弦楽団のNew Year Concert2025のアルバムをひとつのプレイリストに編んだり、あるいは愛好しているThibaut Garciaのアランフェス協奏曲だけを取り出して第一楽章から第三楽章までの短いプレイリストを作ったりした。
体調によっては一枚聴き通すだけの気力がなかったり、15分〜1時間程度の短い尺で聴きたいこともあるので、これは理にかなっているのだと思う。
集めたい音源もたくさんあるし、ジャズに関してはまだまだ集めはじめたばかりで手薄でもあるので、これから少しずつライブラリを育てていく楽しみもある。
私がかつて敬愛していたご婦人の言葉に「待っている間も楽しい」という金言があった。
彼女とは親子ほども年齢に開きがあったが、私と同じく専業主婦をしていて、自由に使えるお金は限られていたようで、貯金をするなどしてアンティークやヴィンテージの食器や家具、小物などを集めるのが好きなお方だった。
お金を払って買うのに待つということがあるのか、と彼女と交流のあった20代の頃は思っていたが、今となってみると、一冊の本を手に入れるのに4ヶ月ほどかかっているし、その間期待をし、時に「ああ……まだ手に入れられそうにない」と焦れながら待つのはそれはそれで楽しいものがあった。
そうして手に入れてきた書物やCDをコレクションする愉しみは、ガチャ課金などでは決して得られないものだなとソーシャルゲームを離れてみて思う。
物価高が押し寄せてきていて、その波が当面引く様子は見えない今、本当に価値あるものと思える物品にお金を使いたいという気持ちはこれまでよりも高まっている。
節約と言ってしまえばそれまでかもしれないし、生活水準の低下と評してしまえばその通りなのかもしれない。しかし、限られたお金をいかに有効に、自分にとっての幸福度を最大限上げることに使えるか考えるのはなかなか愉快だとも思う。
こうしたメンタリティに至ることができたのは、自分自身の認知の歪みが是正されたからというのもあるのだろうし、金銭感覚が正常に近いところまで戻ってきたというのもあるのだろうが、何より拒食症状が改善されたのがやはり大きい。
現在の体重は41kg、BMIは17台だが、39kgの時よりは少なくとも健全な思考状態に戻っているので、できれば現状維持、叶わなくとも43kgぐらいまでは許容範囲とすることで、No Money Dayを一日でも多く増やして手帳に記録していきたい。
Riccardo Muti:Vienna Philharmonic Orchestra/Neujahrskonzert 2025
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