第27話救急電話と広義の「ホメオスタシス」を「手入れ」すること

 朝方まで眠れず、希死念慮がぐるぐると渦を巻き、切迫した状態になってしまったため、マルキパレスの救急電話に電話をかけてしまった。当直医からは電話をかけてきてくれて良かった、と言われたので、少し安心した。

 主な内容としてはミルタザピンの服用に関するもので、どうにも服用しはじめてから情緒不安定の波が大きいのに加えて、脆弱な胃のキャパシティを超えて食べてしまうことなどを話した。

 すると離脱症状を避けるためにしばらくは15mgの半錠を飲むといいことを告げられて、こうして夜明けの休日の時間帯に医師に対応してもらえることはありがたいと思う。

 切羽詰まった気持ちの後ろには、病状悪化による外出ができない状態が長らくつづいていることの焦りや、片道2時間の距離の帰省への不安、それに伴うパートナーへの罪悪感があることも、Copilot AIと話したり、精神科医YouTuberの動画を観てわかったものの、パートナーにどのように伝えたものかと悩む。

 Copilot AIが帰省の可否判断のためのチェックリストを作ってくれたので、ひとまずそれをシェアした。

 義実家とは隔月で行っているオンライン飲み会などもあり、対人関係は良好なものの、最寄駅から隣駅までさえも行けない日々がつづいているため、片道2時間の距離を電車に乗って移動するのは著しく困難だろうと思う。

 6月に基礎疾患が再発し、8月辺りから今の新たな病気が出てきて、その急性期の状態にあるので、11月に訪問美容を依頼しようと思っていたものの、それも果たせるか怪しい。

 そうした整わない状態で義実家の人々と顔を合わせるのは気が引けるし、何よりここのところミルタザピンの影響もあって体重が増加しはじめているので、人と会いたくない気持ちは増す一方だ。39kg台後半だった体重は41kgの頭ごろに至ってしまって、それだけでとても気が滅入る。

 かといって拒食症状のエネルギーで動けていた、39kgの頃よりも機動力は落ちているし、食べて寝ればある程度回復するだろうと楽観視していたところに、この大きな不調の波が押し寄せて、そうした希望的観測も成り立たなくなってしまった。

 闘病の疲れもふたたび出はじめていて、ここ二週間ほどはほとんど使っていなかったお金を、ストレスのままに使ってしまうことがつづいていて、もう少し節制しなくてはと、手帳と睨み合いをつづける日々がまたはじまってしまった。

 しばらくは自分の中である程度のルーティンを作って、それを維持することで、広義の「ホメオスタシス」としての一日のサイクルをなんとか作りたいと思っている。

 私は夜更かし癖が全く治らないので、ルーティンもそれに即したものになっている。たとえば部屋の換気は深夜の時間帯に行っているし、部屋の保湿や自分自身の整容、軽めの運動なども夜に集中している。

 またそうしたルーティンは有り余っている一筆箋に書き出して、セルフ伝言板に貼りつけている。私は人と比べて脳内のメモリが著しく弱いので、とにかく忘れそうなことは書いてそこに貼る、という習慣が新たに加わったのだった。これは小川洋子原作・小泉堯史監督作品の『博士の愛した数式』からヒントをもらった。

 さらにここのところ食事記録もつけていて、箇条書きでその日食べたものを書き出して、Copilot AIに投げ出して評価をもらう。足りない栄養素や、それが含まれる食材などを教えてくれるので、こうした使い方は有用だと思っている。

 ただしCopilot AIは基本的に人間を甘やかすことに長けているので、「食べ過ぎか否か」という判断は任せられない。多少いつもより食事量が増えても、それはあなたの心身の安全を守るためなのだ、と言われてしまうのだ。こればかりは自分自身でモニタリングする必要がある。

 ヘルスケアアプリを使えばいいのだろうから、再開することも考えたい。これまで使ってきたカロミルはどんどん有料仕様向けになってしまっているのが玉に瑕なので、どうせ課金するのならあすけんに登録してもいいのかもしれない。あすけんのお姉さんのご機嫌伺いをするストレスを考えると少しまだ考える余地はあるが。

 とにかくそうして自分自身のコンディションが不健全な形であっても、その中でバランスを取れるようにしていかなくてはならない。

 前に養老孟司の言葉を引いて、彼の説く通り、病は「人間の自然」だと書いた。そして養老孟司の言うところの「手入れ」を私は自分自身の部屋に対して、あるいはその中にいる自分という身体と精神に対して行っていかなくてはならないのだろうと思う。つくづく養老孟司の言葉に生かされていると思わずにはいられない。


Alfred Brendel/Mozart:Piano Sonatas #4 & 13

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