ボーイ・ミーツ・ガール

五來 小真

ボーイ・ミーツ・ガール

「——ごめんなさい。あなたのことをよく知らないから……」


 大学で突然の告白をされた。

 しかし、わたしにそれに応える義理はない。


「——だったら、友だちからで」


 折れない男だった。


「『あなたに興味ない』って言ってるの——!」


 ここははっきり言っておくべきだろう。

 

「知らないのに、どうして興味がないって言えるんです?」


 むぅ。

 なかなかの道理だった。

 

「——だったら」


 わたしは自分の研究分野の話をした。

 彼は目に見えて狼狽していた。


「——どう? 興味があるかどうかは知ってみないとわからないって言うなら、これも知ってみないとね。話はそれからよ」

「わかりました。やってみましょう——!」


 それからの彼は、驚くほどの進化を遂げた。

 わずか一年でわたしの研究レベルを上回りだしたのだ。

 

「告白の返事なんだけど——」

「悪いけどあれは取り消させてください。今はもっと興味のあることが出来たので——」


 こうして彼は、わたしの研究分野の第一人者となった。

 女で男は変わると言うが、こうまで変わるものなのか。


 告白を蹴れたという意味では勝利したのかも知れないが、なんだか釈然としなかった。

  

 <了>

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ボーイ・ミーツ・ガール 五來 小真 @doug-bobson

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