その3~バカな女と浮気疑惑~

「綾菜、ごめん。 妊娠したみたいで…」


はぃいいいいいいい!?


今日はいつもの週末。

私はいつも通りゆう君のアパートに来て、ご飯を用意し始めた時に来た突然の告白……。



水口優人――

私の彼氏で未知の生物だと思っていたがまさか男で妊娠するとは…。

冗談だと思ったが、彼は正座をしながら神妙な面持ち…。



「私の子どもを妊娠したの?」

私はゆう君に向かい合い、正座をして詳しく話を聞く事にした。



ゆう君の話によるとこういう事らしい――

高校時代のクラスメートと久しぶりに会って、一緒にお酒を飲み、そのまま酔いつぶれたゆう君。

気が付くとホテルで、そのクラスメートと裸で寝ていたとの事。



まさかゆう君が浮気をしていた…。

全くそんな気配を感じてなかった私はショックで一瞬頭が真っ白になった。

瞬間的にゆう君を殺してしまいそうにすらなったのだが…すぐにゆう君の言葉の違和感に気付いた。


ゆう君は…お酒が弱くて…アルコールが入ると絶対に立たなくなる!!


それは水口優人生態研究の第一人者である私は良く知っている!

…と言うか一回ベロベロに酔ったゆう君がどれくらい激しいエッチをするのか試してみたくて"色々"した事がある…。

ゆう君は酔うとぐったりする。

服を脱がしてゆう君のあそこをああしたり、こうしたりしたが、本当に無反応過ぎてムカついた程だ。


何よりゆう君は少し潔癖症の気もある。

私の食べかけとかは普通に食べるし私の体は触ってくるのだが、他の人とは体が触れ合ったりする事すら嫌がる。

会社の付き合いでキャバクラに行ったが、「キャバ嬢がべたべた触ってくるのが嫌で早めに帰った。」と木林という後輩が怒ってた事すらある。



そもそもいつ浮気なんかしたのかすら想像できない。




しかし問題は"浮気"では無く、"妊娠"だ。

責任感が強いゆう君が、妊娠させた子を放っておくような事は絶対にしない。

嫌な予感が一瞬頭を過る――


「それで、どうするの? 別れ話…じゃないよね?」


「今、妊娠9カ月でもうおろせないみたいだし、向こうは1年以上前に結婚してて旦那もいるから…。」


ここでゆう君の浮気疑惑は無くなった。

私と付き合ったのは4カ月前だからだ。

つまり、浮気はされていないが…。


不倫かよ!!!


「さいってい!! じゃあ不倫って事!?」

私は立ち上がり声を荒げる。


「そんな事する訳ないだろ!!」

ゆう君も立ち上がりながら声を荒げる。


「不倫でしょ!! 1年以上前に結婚してて、妊娠9カ月ってことは!!」


私の言葉にゆう君がきょとんとする――



え… なにその表情?



ゆう君は顎に手を当て、真剣に何やら考え始めた。


「あれ… 時系列的におかしいぞ…。」


「何が?」


「俺とその子が最後にあったのって結婚前だから、2年以上前なんだけど…」


「え? じゃあ今どうして"ゆう君の子が妊娠9カ月"なのよ?」


「ちょっと、携帯見てみよう!!」


そう言ってゆう君はスマホのLIMEの履歴を私に見せて来た。



普通こんなもの彼女に見せるか?

と思いながら、怖いもの見たさで私はゆう君と不倫女のLIMEのやり取りを読み始めた――



<<約2年前のやり取り>>

優人:昨日は介抱してくれてありがとう。無事に帰れた?


不倫女:ううん。 大丈夫だったよ。 駅で彼が迎えに来てくれたから。


優人:え? 彼氏いたの?


不倫女:うん。 言ってなかったっけ? 浮気しちゃったねw


優人:いやいや! 笑い事じゃないよ! 彼氏裏切ったことになるじゃん!! 俺、1回殴られに行こうか?


不倫女:そこまでいらないよ! 別にそんなの大したことじゃないって、水口は真面目だなぁ~…。

―――――――――


本当にゆう君は面倒くさいレベルで真面目だな…。


この後不倫女からゆう君に"また会おう"とか"エッチしたい"とかと言った申し出がけっこうあったが、ゆう君は"信じてくれる人を裏切るのは良くない"と答え断り続けている。

悲しいのはこの女…ゆう君に自分の下着姿とか水着姿の写真を送りつけたりしていた――


中々イタイ奴だな…。



<<約1年半前のやり取り>>

不倫女:後、1週間で結婚だ。 だけど、私、今の彼氏より水口と一緒にいたいんだけどな…。


優人:そういう事言うなよ。 好きだから結婚を決めたんでしょ? マリッジブルーってやつだよ!! お幸せに。


不倫女:〇〇って所の式場で、10時からここでやるんだー。 下に住所送っておくね。


優人:ありがとう。 お祝いしたいけど、浮気相手の俺が式に行く訳にはいかないよ。 

―――――――――


………この女、もしかして結婚式場で"花嫁奪い去りイベント"を期待してないか?

ここまでのやり取りで全く脈無いのに…。

結婚後も不倫女はゆう君に"会いたい"とか旦那の愚痴を書き綴っている――

最初は真面目に宥めていたゆう君も後半は既読スルーをしている。


って言うか、彼氏の過去のLIMEを堂々と見る彼女って…なかなかシュールだな。



<<そして最近のやり取り>>

不倫女:水口の赤ちゃんを妊娠しました。 もう9カ月過ぎてるからおろせないから、旦那の子だと言って産みます。


優人から発信 通話時間30分

―――――――――


脈絡無さすぎるだろ!!

なんでいきなり妊娠してるのこの女!?


そして、最後に、私は見てはいけないものを見てしまった…。



<<問題のやり取り>>

優人:

妊娠させておいて本当に申し訳ない。 もうおろせないのも分かった。

必要なら養育費は払う。


実は俺、今の彼女が大好きで結婚したいと思ってるんだ。

彼女に隠し事をしたくも無いから正直に全部話して怒られて、別れ話になるかも知れないけど…。

多分、それが俺の罪の制裁だと思う事にするから、それで勘弁して欲しい。

―――――――――



…私と…結婚だとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

何ていう状況で何ていう爆弾仕込んでるんだ優人ぉおおおおおおおおお!!


どうしよう!


えっ!? これってここで返事するの?


プロポーズはちゃんとして欲しいんだけど!?


ここで知っちゃった私はどうすれば良いの???


プロポーズってちゃんとしてくれるよね!?


「………」


悩んだ結果、私はシレっと最後のゆう君のメッセージを削除した――


* * *


「綾菜…本当にごめんね。」


ゆう君は申し訳なさそうに私の顔を見る。


このお詫びは何に対してのお詫びなのだろうか…。


この不倫女の件で言うならば、ゆう君は無罪。

むしろ何もしていないとすら思う。


"優しすぎ"て"女を知らない"って言うのが罪なのかもしれないけど…。


とんでもないタイミングで結婚宣言した事に対するお詫びなら、謝っても許さないけどな!!



私はゆう君にスマホを返しながら答える。


「これさ、この子、完全に妊娠って嘘じゃん。 ゆう君が返事をしないから暴挙に出たんだろうね。」


「なるほど…。 けどさ、こいつ分からないんだよねぇ~…。 旦那がいて新婚なのに不倫願望全開でさ…」



まぁ、この子がやった事って凄く頭が悪いけど、気持ちは分からなくも無いか…。


高校時代、女子にモテてみんなにキャーキャー言われてたゆう君。

そのゆう君と卒業後に出会って肉体関係を持って付き合って…。

ってクラスメートに自慢出来る案件だしね。


もっとも、好きならゆう君の生態をしっかり把握しとかないとだな。

ゆう君相手に変な事するから、こうやってイタイ女になっちゃったんだから…。



「もしもし? お前ふざけんなよ?」

考えている私の横からゆう君の声がする。


えええええええ!

ブチ切れ電話してんの!?


私は急いでゆう君からスマホを取り上げ、電話を切る。


「あや、どうしたの!?」


「"どうしたの"はこっちのセリフだ、アホ~~~~!!」


「アホって…むかつくだろ! こんなの!!」


「この子のHPはもうとっくの昔に0なの! もはやゾンビ状態なの! オーバーキルしてるの!! もうやめてあげて!!」


私はゆう君にスマホを返しながら、LIMEで"悪いけど、もう連絡をしないでくれ。 旦那さんとお幸せに"とだけ返事をし、ブロックして連絡先削除するようお願いする。


ゆう君は素直にメッセージを送るとブロックして連絡先削除をしてくれた。



「…綾菜、俺の事嫌いになった…かな?」

ゆう君は私の気持ちを心配してくれる。


正直少しモヤモヤはするけど、この人は絶対に私に嘘を付かない人だとむしろ安心した。

何十年も人間をやっていて問題も無く潔癖に生きて来た人間なんてむしろいない。


この女みたいに浮気や不倫を何とも思ってすらいない奴だっている時代に逆にレアな存在だ…。




ドサァ!!


私はゆう君を押し倒す。


「え… 綾菜?」


きょとんとするゆう君が無性に可愛く見える。


ゆう君に覆いかぶさった私はゆう君にキスをしてこう答えた。

「今夜…これからゆう君を犯します。」


「は?」


「おら脱げやーーーーーーー!!」


「いやぁああああああああ!!」


私に脱がされるゆう君は何故か女の子みたいな悲鳴を上げていた。



追伸:ゆう君はLIMEの中で発言した、結婚のくだり…本人も完全に書いたのを忘れていたっぽいですw 馬鹿だねw

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