第8話



 すぐに馬上に戻り、空を見上げた。



 追われる者じゃない。

 追う者になるのだ。


 敵は徒党を組み、武器を振るえない村人を残忍に襲う。

 凶悪な獣の集団だ。

 つまりこれは戦でも、復讐でもない。


 ――――狩りだ。


 幼い頃、友人達と遊んだ、

竜生九子りゅうせいきゅうし】の伝承で竜の子の一人である【蒲牢ほろう】は神出鬼没で、より強い獲物を狩ることをことほか好んだ。


 弱い獲物ではその好戦的な血を、鎮められなかったからだと言われている。


 黄巌こうがんが好んで演じていた【蒲牢ほろう】の習性は、

 自由に彷徨い歩く神出鬼没さだったけれど。



 獲物は弱者を食らう、残忍で凶暴な魔物だ。



 ――これから自分は、狩りに行くのだ。



 黄巌こうがんは血に濡れた手で雨の滴り落ちる額を掻き上げると、

 また馬を風のように駆らし始めた。


 彼の行く先を導くかのように、

 上空の稲光が前方へと走る。



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