超臨界知能~全く見えない超技術異文明 vs 火星軌道上衛星に残った5人~

210

序:終末前夜

二一〇〇年、太陽系は崩壊しつつあった。




はじまりは二〇三〇年。海王星の公転速度が〇・〇〇一%上昇し、その後加速を続ける。




決定的な兆候は二〇四〇年。海王星の速度が、従来平均プラス二十三%でピークアウト。減速に転じる。




更なる異常は二〇五五年。海王星が完全に静止する。




終末の幕開けは二〇六〇年。海王星は楕円形に引き延ばされ、静かに崩壊する。崩壊した海王星の無数の残片は、見えない中心を公転し始める。NASAはその中心を「未確認巨大質量物体(UMO=Unidentified Massive Object)」と名付け、海王星残片の公転軌道から運動状態を推定。調査後NASAは「UMOが太陽の重力場に引き寄せられ、その軌道が太陽系内で収束しつつある」と発表した。




二〇七八年、土星が太陽系から脱出。UMOの重力により速度を増し、太陽とUMOを振り切る。




二〇九五年、木星がUMOに捕獲される。UMOの重力によって徐々に軌道を変え、ついにUMOを中心とする公転軌道で安定した。さらに、木星と火星の間にある小惑星帯における鉱物採掘が完全に中止される。そして恒星間宇宙船と人体冷凍保存の研究開発に、世界中から投資が集まり始めた。




二〇九九年、火星が減速をはじめる。地球に帰還する火星圏住民は徐々に増え、輸送のための人員が火星圏で欠乏し始める。




二一〇〇年。九十二億人全員で太陽系を脱出する技術は未完成。地球に決定的な影響が及ぶのは約三年後。UMOが太陽と衝突するのは約五年後。社会に終末観が広がる。




そんな中、この状況をチャンスと見た一人の日本人「田中塵(じん)」が、人類最前線の火星へ旅立つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る