第25話 第二ラウンド・上

 多少のいざこざこそあったが、円滑に第二ラウンド第一試合が始まった。そう『多少』だ、聴くにやはり毎大会に問題児はいるらしく、エンタメの範疇で問題なく試合続行に出来ているらしい。


「さてさて…次はどいつらだ」

「ヴァラックさん、それだけ聞くと悪者みたいですよ?」

「はい失礼発見、デコピンいきまーす。」


 第一ラウンドの最終戦、ノーストラダム対ドゥの戦いで重傷を負った筈のノーストラダムはすっかり元気になった。そりゃあもう失礼なくらいには。その失礼な娘の額の肉と骨を指で弾き、肉の弾む独特な音を鳴らさせた。

 まぁ……つまりデコピンだ。


『ビヂィッ!』

「ドゥワッ!?」

「コント出来るくらいに、もう回復したのね。ちゃん」

「いつつ…あ、はい、お陰様でもう全快近く快気しました。」

「コントて」


 なんでこんなに回復が早いかと言えば、今話を掛けに来たロエチャメのお陰だろう。コイツが治療室まで魔法を掛け続けなければ間違いなく後遺症が残ったと医者は語った、その所為かノーストラダムの奴とロエチャメの距離が少し近くなった気がする。

 するとロエチャメはノーストラダムに質問の声を投げかける。


「良かったの?」

「え?」

「いや…ノーストラダムちゃん、貴女ヴァラックちゃんと闘うの、凄い楽しみそうにしてたのに試合降りちゃって…」

「いえ、確かに殺生禁止の闘技場でルール違反をしたのはあの男ですが、単純な実力勝負で言えば大敗でしたし…」


 …言うは正しいが、それで納得出来るのは大人だな…とシドーの適当に売店で買った食い物を分けて貰い、それをツマミながら2人の話を聴く。


「偉いのね、ノーストラダムちゃん…いえ、ノースちゃん。」

「いえいえ、ロエチャメさん…ロエさん、シード戦までもう直ぐです、頑張って下さい…!」

『もぐもぐ』

「コミュ力、強〜…」

『ひょいっ ぱくっ』


 —女ってのは何でこうも会話が上手いのかね。などと思いながらも、実際自身もコミニケーションは得意ではあるがこうも精神的な距離を詰めるのが得意ではない為、素直に尊敬を覚える。


「百合…良きかな。」

「お前それはキモイぞ…?」

「マスク筋肉女に言われとうないわ!」

「おうごら傷ハゲ、シード戦出られん様にしてくれるわッ!」


 おのれサルダバーンと言わんばかりに喰い掛かるが、女の絡み合いを急に古風な言葉で呟きながら堪能しているコイツが悪いだろうと反省はしない、と言うか『マスク筋肉女』って、もう全部載せなネーミングセンスな所が腹立つ。


「(快活少女×おっとり系魔法使い……いいなコレ)」

「マーデンちゃん、聞こえてるわよ」

「アボボボボボ第二ラウンドまでそろそろですね!!」

「誤魔化し方アナタ下手ネ〜☆」


 私たちの言い争いの横でも何かいざこざがあった様だが、和やかな雰囲気を感じるので大したモノではないのだろうな。と思いつつ、敗戦した者の大半が帰宅する中何故か残っているファソウラ・シドーがその会話に茶々を入れる。そんな中脚を組み、剣の鞘を撫でるリップは、戸惑った様に眉毛を「へ」の字にしてカメカミを撫でる。


「…殺し合い擬きをし合う間柄とは思えん和やかさだな…」

「別に皆んな闘いが好きなだけだし、フツーだろ、フツー」

「そんの女好きは置いといて、選手間で盛り上がってはいけない。なんてルールはねぇだろ?」


 まるで第二試合前の様な疑問を1人呟くリップに、サルダバーンが特段おかしくないと語り、私も同調した。何故闘い合う仲とはいえ仲良くしてはいけない…なんて風潮があるのか私には疑問だ。

 そんな疑問に「それに…」と言葉を続け私はマスクで見えない口元を歪め、言葉をこぼす。


「試合となれば本気でヤリ合うんだ。楽しもうぜ。」

『ゾワッ!』

「…その殺気は試合で出していいモノじゃない。」

「フハハ。反則者のドゥよりかマシだろ。」


 全く、正直ノーマックだったリップだが、こうも殺気?闘気?…に敏感だと弄りがいと言うモノがあるな…。——などと下らない事を思いながら、若干引き気味のリップを横目に第2ラウンドを待った。何故私の試合は第3ラウンドからなのだ…。

 早くしてぇ…


———


「『大…っ変お待たせしました!1試合1試合こんなに時間掛かるのは流石に初で運営側もドタバタで…なんて言い訳は置いて、遂に第一ラウンドが決着!これより第二ラウンドを開始致します!!』」


 うおおおお!…と盛大な声援に包まれて始まった第二ラウンド、この試合の後は漸く自分の番だと嬉々として見えぬ頬を歪めるのは当然ヴァラック、しかしふと思った事がある。


「…?ノーストラダムが降りたら、誰が試合に出るんだ?」

「『そーんなこともあろうかと、こちらで審議致しました!』」

「(何処から聴いてるんだ…?)」


 流石に魔法系で聞いているんだろうが、全然気付かなかった。まぁよくよく考えれば、音を届けられるなら集めるのも容易いのか。と1人納得してアナウンサーの話の続きを待つ。


「『第二ラウンドに上がったのは現在はロエチャメ選手、リップ選手、マーデン選手の3名!そしてこのいずれかの選手ともう一名が戦ってもらう事で、2人の勝者が決まり、シードへの闘いへと進む!』」

『そわっ』

「!(もしかしたら…。しめたでアル!この場にいる敗戦者は俺だけ!もしかしたら、もしかする…?)」


 ——1人、敗者復活を期待するファソウラ…奇数では第二ラウンドを始められない為、どうするのかと選手一同がアナウンサーに注目を集める中、1人、この男は無表情ながらも、目の奥の奥をキラキラと輝かせていた。

 少しチャラチャラとした雰囲気のこの男だが、武闘家としては普通に最高峰クラスの武術の使い手、負けたことにイチャモンをつける気はないが、再戦できるとなればしたい。武闘家として真っ当な男である。


「『選手らに秘密で行った議論の結果!』」

「…(ごくっ)」

「『地味な試合だったマーデン選手とリップ選手で戦って貰い、ロエチャメ選手はそのままシード戦へ進んでもらう事になりました!』」

「ずこーーーッ!?」

『ガシャッン!』

「1人で何してんだ…コイツ…」


 まぁそんな上手い話がある訳もなく、完全にこの大会への試合復帰の道を断たれたシドーは「ヨヨヨ…」と分かりやすくふざけた嘘泣きをする。

 ——でも本当にちょっとだけ期待してた分悲しいのは本当だ。


「はぁ…」

「元気だせ、試合後、お前ともヤリてぇ」

「!オヨヨ、それは是非!」


 ——そうでもないのかもしれない。


——


「うーん…正直納得出来てないけど…ノースちゃんも闘うつもりないみたいだし、第二ラウンドは飛ばして第三ラウンドに進むわ。」


 第二ラウンド試合開始前、当然この采配に不満が出るだろうと考えた運営側はこの発表と同時刻に該当選手へスタッフが声を掛けた…が、思いの外不満の声は上がらず、スタッフの人は「ほっ」として説明を続ける。

 ——発表前に相談すべきでは?と思ったが、こんな大規模な大会で選手一人一人に予定合わせなんて無理に決まってるだろうし、行き当たりばったりになってしまうのか。


「すみません…一応判断理由としましては、マーデン選手とリップ選手の実力が計りずらい試合で、観客の方々からも少し不満が出てまして…元々勝ち上がった時点でお二人を試合相手に組み合わせるのは決まっていたのです。」

「地味…だよなぁ…分かってたけど、他人から言われると余計悲しく…」

「…事実だ、何も言わん。」


 …なんか凄い『ずぅーん』とした雰囲気を醸し出してる2人に少し気の毒に思う。地味…とは言うが、アレはかなり高レベルの読み合いだった。ある程度戦い方を熟知して置かないと理解するのは難しいだろう。

 私の最も『不得意』とする『逆転』を体現した良い試合だった、私は2人を尊敬する…どれ、少しあの会話上手の女2人に習って、ここは私が和やかなムードにしてみよう。


『ぽんっ』

「…な、慰めですかヴァラックさん。」

『ぽんっ』

「…自分の弱さは自覚している、気にしな」

「お前ら強いぜ?あんなにボコボコにされてまさか勝つなんてなぁ…?尊敬するぞ。」


「「煽ってます!?」」

「!?」

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