第十九章：結界の内側と「真の魔族」

「アッシュ」たちは破壊された城門をくぐり王都の混沌をかいくぐって王城の中心へと辿り着いた上空に輝く巨大なドーム状の結界は近くで見ると無数の光の糸が絡み合った巨大な繭のようだった彼らが結界に触れようとした瞬間に周囲を警戒していた裁定者たちが一斉に彼らを囲んだ「リーネ」が、その中から静かに姿を現す

「兄上ここまで来るとは……覚悟はできたのだな私の邪魔をするつもりなら容赦はしない……」

「リーネ」の表情は冷たいままだったが、その瞳の奥には微かな痛みが揺荡う、しかし「アッシュ」の決意は揺るがなかった

「「リーネ」お前の求めるものが何であれ俺は一緒に行くお前を一人にはしない……この結界の先に何があるのか俺たちの目で真実を確かめるまでだ……」

二人が対峙する中「リーネ」は答えず異形兵士たちに結界を開くよう命じた異形兵士たちが光の繭に手をかざすと結界の一部が歪み扉のような空間が生まれた

彼らがその内部に足を踏み入れた瞬間に光り輝く甲冑を身につけた人間によく似た姿の結界の守護者が現れ無表情なまま「アッシュ」たちに剣を向けた

「盟約を破ろうとする者には容赦しないぞ……」

裁定者と守護者の戦いが始まった「リーネ」が守護者たちを食い止める間に「あまがみ」と「アッシュ」は結界の奥へと進む結界の中は想像していた禍々しい空間とは全く違っていた

そこは深い森のような静けさに満ちた懐かしい風景が広がっていた

そして、その中心に佇んでいたのは伝説に語られるような凶悪な魔物ではなく人の形をした

しかし深い悲しみを湛えた瞳を持つ「銀髪の少女」だった彼女の身体は鎖のような光の糸に繋がれ苦痛に顔を歪めている

「あれが……真の魔族？……」

「あまがみ」は、その少女の姿を見て息をのんだ「リーネが」守護者たちとの戦いを抜け出し「アッシュ」達の前に立つ

「歌姫よ……その歌声で……この子を解放してあげて……この子こそ贄として捧げられた我ら一族の真の姿なのだ……」