恋愛短編シナリオ集

崖の上のジェントルメン

ストーカー被害を同僚ちゃんに相談したらその子が犯人だった



あっ、お疲れ様~。


今から帰り?おー!今日は早いね!いつもはもっと遅くまで残ってるのに。


ああ、そっか。そっちの班、係長がしばらく出張でいないんだっけ?よかったじゃーん!あの係長がいないだけで、だいぶ班内の空気変わるでしょ?


そうそう、私もちょっとだけあの係長と仕事したことあるんだけど、ほんとむかつくよねー。余計な一言多いし、無駄なとこ細かいし。


しばらくの間いなくなって、君も気兼ねなく帰れるね!よかったよかった。


……ん?なに?どうしたの?そんな浮かない顔して。何かあったの?


……うん、うん。


ええ!?ストーカー被害!?い、いつから?


1ヶ月前から……。そっかあ、大変だね。どんなことされてるの?


……帰り際につけられてる気がする、かあ。それって、気配を感じるってこと?それとも、姿を見たことがあるとか?


何度か見かけたんだ!か、顔とかはどうだった!?


見れなかったか~!うーん!悔しいね!


背格好とかはどんな感じ?うん、うんうん、髪はショートボブで、身長は小柄……か。あ、じゃあイメージとしては私っぽい感じ?おー、なるほどねえ。


うーん、誰だろう?誰か心当たりある?


そっかあ、ないかあ……。


え?他にもされてることがあるの?ど、どんなこと?


……手紙?


手紙が投函されてるの?君の家のポストに?


え!?しかも切手がないって……!じゃあ家の前まで来て、直接投函されてるってこと!?いやいや怖すぎでしょ!気が狂ってるって!


ち、ちなみに、手紙にはなんて書いてあるの?


……うん、うんうん。うわあ……、典型的なヤンデレじゃん。『永遠にあなたと一緒になりたい』とか、鳥肌立つわ……。


ええ!?し、しかも全部血の文字で書いてあるの!?うそでしょ!?そんなドラマみたいなことある!?


もうマジでやばいってそれ!絶対警察呼んだ方がいいよ!


いやいやほんとに!何かあってからじゃ遅いって!


うん、そうそう!それがいいよ!今日にでも交番に行って、話しておこう?早い内に手を打っておかないと、絶対いつか大変なことになるもん。


不安だったら、私も一緒についていくよ。いいっていいって!遠慮しないで!さすがにこれはヤバイと思うし、私も放っておけないよ。君は一人暮らしだし、これから一人にしちゃうのは心配だよ。


そうだ、今日はどう?ストーカーの気配はある?


……なさそう?よかった。じゃあ今のうちだね、早速交番に……。


あ、ちょっと待って。今あれ持ってる?ストーカーからの手紙。


持ってない?じゃあ、一回君の家に取りに帰らない?ほら、交番に通報しに行くんだったら、そういう証拠品もあった方がいいと思うの。


うんうん、じゃあ一旦君の家に行こうか。


ほんとに気にしないでいいってー!今度飲みに行った時に奢ってくれたらいいから!ふふふふ!




…………。


ガチャガチャ、ギィ(鍵を開けて扉を開ける音)


お、私も入っていいの?ありがと、お邪魔しまーす。


おお、思ってたより綺麗だねー!男の一人暮らしだし、もうちょい汚いかと思ってた。


え?一言多いって?ふふふ、ごめんごめん!


あ、それが例の手紙だね?見せて見せて。


……はあ、こんな手紙を送ってくる人がいるなんて、ほんと信じられないねえ。


さ、警察に届けよう。こんなつまんないことで、君の時間が取られることないんだからさ。


……ん?どうしたの?


えー?なになに?改まってお礼なんて。


いやいや、ほんとに気にしなくていいよ~!私が好きでやってるだけだから!


逆の立場だったら、君も同じように心配してくれるでしょ?ほら、それと一緒だよ。


ん?


ははははは!最初は私が犯人かも知れないって疑ってたんだ!


いやいや、謝らないでよ!それは仕方ないって!背格好が似てたんじゃ、そう思うのは当たり前だよ!



それに、本当に私が犯人だしね。



ん?なに?


どうしたの?そんな豆鉄砲食らったみたいな顔して。


うん、そうだよ、私が犯人。


冗談じゃないよ、本気だよ。


バチンッ!(スタンガンの音)


ガタッ、ガタンッ(人が倒れる音)


さ、そのまま床に寝て?


言う通りにしないと、またスタンガン当てちゃうよ?


そうそう、良い子良い子。


ああ、可愛い。驚いた顔を見せてくれるなんて。


好き。好き。ほんとに好き。


うん?なに、どうしたの?


ふふふ、まだ私が犯人だって、信じられてないんだ?まあそうだよね、一番親身になってくれたはずの同僚が犯人だなんて、思いたくないよね。


それが、私の狙いだったの。


いいことを教えてあげるよ。人を騙す時の、一番のポイント。


それはね、自分に都合の悪いことを、あえて教えることだよ。


私は自分から、背格好が犯人と似てることを明かしたし、警察に通報した方がいいって話した。こうするとね、自然と犯人候補から外してもらえるの。犯人が自分から都合の悪いことを言うはずがないって、そう思ってくれるから。


その結果、私はこうして君の家にまで乗り込めた。ふふふ、賢いでしょ?君も誰かを騙したい時は、そうするといいよ。


気が狂ってる?そうだね、それがなにか?


ああ、もう暴れないで。またスタンガンやっちゃうよ?


もう痛いのは嫌でしょ?だったら大人しくてて?


そうそう、良い子だね。


ああ、ねえ。キスしていい?


もう我慢できないの。


こんなに近くに君の顔があって……。呼吸も、心音も、全部聞こえてきてて。


ねえ、するよ?キスするからね。


……ん。


んちゅ、んん。


はあっ……はあっ……。


ふふふ、君の唇、柔らかい。


さあ、このまま私のものになって。


全部を私にあずけて。


おかしくなるくらい、気持ちいいことしてあげるから。


だから、だから君も。


私と一緒に狂ってよ。





─────────────────

シナリオを読んでくださった方

弥生和華 さん

https://youtu.be/H6yj954uyj0?si=p4fGDfM3Jw_kPgRK


色葉つまみ さん

https://youtu.be/RtNVvFPAaok?si=fAxLar9SGQE4flRV


ももた かずな さん

https://youtu.be/GOAaIg1xKvY?si=OVRt2DPLJAh3ezgc


麦咲輪紫葵 さん

https://youtu.be/2eFWdt9NR0c?si=N9fcXsTjADKSd6rm





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