九郎の童話集
透亜九郎
さんびきのぶたやろう
むかしむかし、あるところに豚野郎三兄弟が年老いた年金生活のおかあさんと暮らしていました。
長男は萌え豚で、日々美少女アニメと女児向けアニメを鑑賞して過ごしていました。
次男はマゾ豚で、普段パチンコに入り浸り勝った日はSM倶楽部、負けた日は身体をビクンビクンさせて悦んでいます。
三男は二郎豚。お小遣いは全てラーメン二郎に使い、地域のロットマスターとして名を馳せていました。
言うまでもありませんが、三匹とも無職です。
ある日、豚野郎の三兄弟がついに限界を迎えたおかあさんから家を追い出されました。
兄弟たちは手切金としてそれぞれ10万円を渡され、路頭に迷うのでした。
「兄さん、どうしよう。こんなんじゃ生きていけないよ」
「放置プレイが気持ちいい」
「いや、僕らもいい歳だ。プリキュアたちのように立派に生きるべきなんだ」
長男は比較的しっかりものだったので、まずは家を建てようと提案しました。そんな長男は言います。
「だけどこの辺りには狼がうろついているらしいから、みんないっしょに居てはまとめて食べられてしまう。気をつけてそれぞれで暮らそう」
「むしろ食べられたい」
「……うん。ぼくがんばるよ!」
こうして三匹はそれぞれ家を建てることになりました。
そのようすを陰から窺っていたのは狼でした。
「あんなところに丸々と肥えた豚野郎が三匹も。社会にとってよくないから俺が処分してやろう」
狼はこそこそとその場を去りました。
さて、三男の二郎豚はバラの家を建てました。
ピンクの赤身に真っ白な脂のコントラストが美しい家です。
家の中で、二郎豚は祝杯の家二郎を飲んでいます。
すると外から声が聞こえてきました。
「二郎豚さん、二郎豚さん。私に二郎を分けてくれませんか?もう三日も食べていないのです」
二郎豚は言いました。
「これは僕の大切な二郎だからあげられないんだ」
「そこをなんとか……」
「食べ終わったら近所の二郎のロットを守る仕事があるんだ。ごめんね」
そう言って、二郎豚は鍋に五割ほど残った二郎をひと口で飲み干しました。
「そうかそうか。分けてくれないのならこうしてやる!」
じゅーじゅー、と肉の焼ける美味しそうな香りが家に漂います。不思議に思った二郎豚が外を覗くと、なんと狼がガスバーナーで家を焼いていたのでした。
「お、狼だぁ!」
二郎豚はぶるぶると震えました。
その間もじゅーじゅーとバラの家は焼き肉になっていきます。グゥ〜とお腹が鳴りました。
そういえばもう一分もご飯を食べていません。
ついに我慢できなくなった二郎豚は、焼き肉となったバラの家をもりもりと食べ始めました。
焼き上がったうちからもりもりもりもりと肉を食べていると気がつけば家がなくなっているではありませんか。
「わ、わぁ!僕の家が!」
二郎豚はえんやこらと狼から逃げ出しました。
さて、次男のマゾ豚は青空の下という広い家に住むことにしました。服を脱ぎ捨て、社会という枠組みからすっかり解放されています。
道行く人々の嫌悪の目に快感を覚えて一石二鳥です。
これで女王様がいてくれたらなぁと思うドM豚。
そんな家で優雅に暮らしていたマゾ豚に声がかけられました。
「公然猥褻の現行犯で逮捕する」
おまわりさんにドM豚は連れていかれました。
手錠をかけられたときに身体をビクつかせたのはなぜなんでしょう。
長男の萌え豚は同人誌とタペストリーで作った家を建てました。360°全てを萌えに囲まれて幸せそうです。
廃品回収からくすねてきたテレビとBlu-rayレコーダーを近所の家から引いてきた電源に繋いで女児向けアニメを齧り付くように観ていたときでした。
外から声がかけられます。
「萌え豚さん、萌え豚さん。おすすめのアニメがありますよ」
「果たして僕の食指が動くものかな?」
そう言って扉を開けると、そこには狼がいました。
「うわぁ!狼だぁ!」
驚いた萌え豚は家の中に引き返して、DX変身ステッキを構えて勇敢に立ち向かいます。
それに狼は笑って言いました。
「無駄だ無駄だ。今からお前は大変なことになるのだ」
「な、なんだって?!」
するとまた外から声がしました。
「こんにちはー!出張買取サービスでーす!」
萌え豚の家は売られました。DX変身ステッキもテレビもBlu-rayレコーダーも全部です。
グッズは二束三文で売れて、テレビとBlu-rayレコーダーは廃品回収として料金を請求されたため、グッズの売却金は手元に残りませんでした。
「はっはっはっ!いい気味だ!」
三匹の豚野郎の末路に狼はうれしそうです。
そんな狼にばさりと何か掛けられました。
手に持ってみるとそれは網でした。
狼は保健所に回収されていきました。
悪はこの世に栄えない。
めでたしめでたし。
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